【PVアクセス数一万達成! お礼SS】幻獣たちの待ち時間
ギルドへ行くと、ルイは大抵暇だ。というのも、縮小化を使って小さくなれないから、カイトと離れて厩舎へ入る必要があるからである。
これはルイの失敗と言えた。街までカイトに再会できたのが嬉しくて、街のすぐ傍まで普通に巨大化したまま来てしまったからである。
以降、カイトが兵士に囲まれるわ、ギルドなどの施設に一人だけ入店御断りされるわ。大きな身体は人々にとって中々受け入れられないということをルイは知る。
カイトもそんなルイに申し訳ない顔をしつつも、普通は身体を自由にサイズ調整なんて出来る従魔なんていないだろうから、とルイのスキル使用を控えるよう言い含めてきた。カイトに言われてしまえば、否やを唱えられるルイではない。
そんなこんなでいつものごとくギルドへやってきて、慣れた足取りで厩舎に向かう。その背にはいつものように赤い小鳥が鎮座し、のんびり寛いでいる。
『今日は時間掛かるかもだピィ』
『そうなのー?』
『カイト兄、あの泣き虫ギルド員に捕まったようピィ』
ギルドの中の様子が見えたのだろう、そう教えてくれたアルに、ルイはなるほどと頷いた。確かにそれなら暫くは出てこない。彼の人物は人の好いカイトにこれでもかという量の依頼を見せて選んで貰うまでは引くまい。
『よし、特等席は空いてるの』
ギルドの厩舎へ入りルイは頷いた。厩舎一番手前、カイトがギルドから出てきたらすぐに合流できる位置。ルイはそこがお気に入りである。
しかし、ルイが喜んでそこへ入る傍らで、ほっとしたように厩舎の奥で脱力する魔物たちがそのまま床に突っ伏した。
実はルイが喜んでいるこの現状、必然である。彼がその場所で毎回休んでいるうち、そこに染み付いたフェンリルの匂いに気付き、ルイがお気に入りにしているのを理解した魔物たちが、そこから離れて厩舎の奥から順に入っていくからこそ毎度空いているのだが、そのことをルイは理解していない。
ちなみに他のテイマーたちが飼い慣らしたモンスターを手前の部屋に入れようとしたら、暴れに暴れて嫌がる始末であるのだが、その理由をルイが知るわけもなく。ついでにテイマーたちも今までまったく抵抗しなかった従魔たちのその拒絶の理由が分からず首を傾げつつ、奥に連れていく生活を送っている。
なお、ルイがいる間テイマーたちがモンスターを連れ出す、あるいは連れ込むときは飼い主から決して離れまいと全力でくっつきつつ、足早に遠ざかっていく始末である。
同じくその一因となっているフェニックスたるアルは、そんな周囲の反応から大体の魔物たちの心理に薄々気付いているが、それによって人懐こいルイが悄気るのも面倒だと思い、沈黙を貫いている。
『今日の依頼はどんなもの来るか謎なのー。 配達依頼ならいっぱい手伝えるのー! 討伐依頼でもいいのー』
『さぁ、何とも言えないピィ。でも、カイト兄がアルたちの力を頼りにしてくれるなら頑張るピィ』
『当然なのー』
雑談を交わしつつ、カイトの戻りを待つ。
『今日は良い天気なのー。お仕事日和なのー。お散歩でもいいのー』
『分かるピィ。こういう日はのんびりとしたいピィ』
『カイのご飯の種類を増やすためにも色々回るのー』
『いつも調味料が欲しいと言ってるピィ。見つかったら美味しい料理が食べられるピィ』
『考えただけでもお腹が減るのー』
ルイの口から涎が垂れ、厩舎の藁や地面に染み込む。更に深まったフェンリルの匂いに、奥の魔物たちがびくりと身を竦ませた。
『だからといって、食べ過ぎは駄目ピィ?』
『仕方ないのー。このサイズだと魔力の消費が多いから補給が大変なのー』
『ちっちゃくなれても、そこそこ食べる癖にだピィ』
現在、四匹のなかで最も大食らいなのはルイである。次点でネロ、アルとレンは横並びで少ない。カイトの料理が優しい味ゆえ食べすぎてしまうのだ。空気中の魔素を取り込めるアルたちにとっては、嗜好品でしかないので、食べなくても生きてはいけるのだが。
『美味しい料理は明日への活力なのー』
『良いこと言ってもカイト兄に迷惑かけるのは駄目ピィ』
『でもアルだって料理を断らないのー』
『当たり前ピィ。カイト兄の料理が美味しいのは知ってるから、貰えるなら貰うピィ』
そんな会話をしながら待つことしばし。
『あー、カイが出てきたのー!』
ギルドの扉を開けたカイトを匂いで嗅ぎとったルイが跳ね起きる。突然の動きに軽く羽ばたくことで対応したアルは、再びルイの背に腰を落ち着けた。
「お待たせ、ルイ。アル。行こうか」
『はいなのー』
『了解ピィ』
厩舎へやってきたカイトの声かけに応じ、素直にそこから飛び出してカイトに並ぶ。
そこからのんびりと歩きだし、一行は今日もまた、主人のために力を奮うのだーーー…。
はい! というわけで、遅まきながら記念SS投稿させていただきました。
一万達成したので、文章考えているうちにもう一万九千……まぁ、本編で上手く差し込めない小ネタで祝ってるだけなので、需要があるかは疑問ではありますけど。
というか、このペースでいくと、おそらく二万アクセスのとき三万越えてるんだけど。文章化するのにものによっては時間掛かるけど、これはブクマ用、アクセス用、と平行しながら作ってるのに、ブクマ用が早く完成したからとアクセス用に切り替えて投下するのもなんか違うし。
まぁ、楽しんで貰えていることと信じて小さな成果を祝しましょうということで。
それでは、本編も引き続きお楽しみくださいませ。