とりあえず説明を受けました
「さて、だいたいの状況を説明したところで、話を進めようかの」
アドラウスがそう言って、杖を振る。すると、真っ白な景色が変化し、足下に見覚えのない景色が広がった。
「ここは、わしが他の神々とともに管理する世界のひとつ、エイルシア。お主には、この世界に転移と言うかたちで第二の人生を歩んでもらう」
「転移、ですか……」
「そうじゃ。四匹もの獣を愛し愛されたお主に、それらを司るわしからのご褒美、じゃの」
にこやかにそう笑うアドラウスが、一息ついて言葉を続ける。
「お主の本来の身体をベースに、わしが手を加えたものだから、多少髪や目の色など変わったが、まぁ、些細なものじゃて」
それは些細というのか。
疑問に思いつつ、声には出さない。
「そして、この四匹もお主とともに下界へ下り、共に過ごしていくこととなる」
「ルイたちも……?」
「そうじゃ。皆が皆、お主に恩を返したいと願い、わしの試練を乗り越えたのだからの」
にこやかな顔で言われた事実に、思わず傍にいる四匹を代わる代わる撫で回す魅人である。
「さて、だいたいのことは教えたが、聞きたいことはあるかの?」
アドラウスの問いに、魅人は口を開いた。
「エイルシアはどんなところです?」
「お主の世界で流行っておる魔法や剣が飛び交うファンタジー世界かのぅ。ほら、本などになっておる」
「俺はその世界で、どのように生きれば良いのでしょう?」
「そなたに対する褒美なのじゃ、好きにすればよい。ただ、悪いことをすれば当然天寿全う後に裁くがのぅ」
「俺は、魔法とか使えるんでしょうか」
「努力次第じゃ。素養こそ与えたが、頑張らなければ難しかろう」
「では、武術に関しても?」
「当然、同じじゃ」
質疑応答が繰り返され、疑問をひとつひとつ解消していく。やがて疑問が尽きた頃に、魅人は「だいたい分かりました」と質問を止めた。
「では、最後に手向けとしてこの魔法をやろう」
そう言ってアドラウスの杖から、光が生まれ魅人の胸に吸い込まれた。
「鑑定、と声に出すと良い」
「か、鑑定」
途端、目の前に青い画面が現れる。
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ステータス
名 前/カイト・ツカノ
種 族/人間種
職 業/ーーー
年 齢/20
レベル/5
スキル/鑑定 Lv.1
料理 Lv.4
裁縫 Lv.2
掃除 Lv.4
算術 Lv.5
調教 Lv.6
称 号/異世界転移者
幻獣に愛されし者
獣神アドラウスの祝福者
魔法使いの素養を持つ者
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「見えたかの?」
「これ、俺のステータス、ですか?」
「そうじゃ。お主の現時点でのものじゃから、鍛練次第でどうにでもなるがの。最大レベルは10じゃ」
「そうですか……」
今までの生活で培ってきた技術も反映されているので、まぁこんなものかとも思う。
「慣れるために、この子らのも見ると良い」
「そうですね。ルイ、レン、アル、ネロ。見ても良いかな?」
『構わないのー』
『りょうかいキュー』
『問題ないピィ』
『いいのだにゃー』
四匹の了承を得て、魅人は鑑定を発動した。
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ステータス
名 前/ルイ
種 族/氷雪狼
レベル/80
スキル/水魔法 Lv.4
氷魔法 Lv.7
爪 術 Lv.5
咆 哮 Lv.4
気配察知 Lv.3
暗 視 Lv.3
縮小化 Lv.5
称 号/試練を乗り越えし者
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名 前/レン
種 族/宝玉獣
レベル/72
スキル/光魔法 Lv.8
結界魔法 Lv.6
付与魔法 Lv.5
気配察知 Lv.3
暗 視 Lv.2
称 号/試練を乗り越えし者
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名 前/アル
種 族/不死鳥
レベル/67
スキル/火魔法 Lv.6
風魔法 Lv.3
超再生 Lv.5
飛 翔 Lv.5
気配察知 Lv.3
暗 視 Lv.5
縮小化 Lv.5
称 号/試練を乗り越えし者
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名 前/ネロ
種 族/猫又
レベル/55
スキル/闇魔法 Lv.6
時空魔法 Lv.7
爪 術 Lv.3
気配察知 Lv.3
暗 視 Lv.3
称 号/試練を乗り越えし者
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「………ちょっと待ってくれますか」
見えたステータスに頭痛がして、頭を抱えながら魅人は待ったをかけた。
「まず、ルイ? 柴犬だったよね? 何で狼になってるの? しかもフェンリルって神話の生き物だよね?!」
『頑張ったのー』
頑張ったら犬が狼になるものなのか。伝説の獣へ生まれ変わるものなのか、問い詰めたいところだが、本人は『誉めて誉めて!』とばかりに目を輝かせている。可愛い。
「レンも、カーバンクルなんて伝説を体現した存在になるなんて……」
『いっぱい頑張ったからだキュー』
しっぽをふりふりさせながらそう主張するレンに、思わず手が伸びて撫でてしまう。超可愛い。
「アルも、フェニックスなんて、どんな超進化したらそうなるの……というか、なんで触れるの」
『頑張ったら炎を自由に出し入れ出来るようになったピィ』
火魔法を熟練させ体表に纏う炎を自由に出し入れできるようになったことで、人である魅人でも触れる人肌より暖かい程度の体温維持を可能にしているらしい。なんでもありか。
頑張った結果、魅人に触れることができるのが大変嬉しいのか、魅人の方に留まってすりすりとすり寄ってくる。くっそ可愛い。
「で、ネロ? 他のより全然受け入れやすい見目だけど、時空魔法なんてぶっ飛んだスキルが見えたんだけど、なにこれ?」
『こんなのだにゃ』
ネロの足下の影が広がり、影から作られた手が大きな黒穴から、猫が喜びそうな猫じゃらしや魚を出し入れする。
「まじかお前。どんなチートなスキル手に入れてるんだよ……」
『あるじが快適に過ごせるよう、頑張ったのにゃ』
確かに、あれば便利ではあるが。頑張ってできるか普通。
しかし誉めて欲しいと言わんばかりに見つめてくる視線に根負けし、魅人は頭を撫でてやる。まじで可愛すぎる。
自分に努力の成果を誉めて誉めてとすり寄ってくるもふもふたちに、怒れない。というか、そこまで頑張った理由が自分だというなら、むしろ誉めまくるしかない。
だいたい、その成果で魅人が困るわけでもないし。
そう楽観的に捉え、気持ちに整理をつけた魅人は、アドラウスのほうへ向き直った。
「か、確認も出来たことだし、そろそろ行きたいと思います」
「そうか。では、そなたらを送ろうかの」
アドラウスが杖を一振りすると同時に、魅人の足下に魔方陣が出現する。
「では、そなたらの人生を祝福しよう。汝らの行き先に幸福を祈るーーー」
そうして光に包み込まれ、魅人の視界は白く塗りつぶされたーーー…。
とりあえずプロローグここまでで!
もう遅いので休みます。
おやすみなさい!
読んで頂きありがとうございましたo(*⌒―⌒*)o