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交渉を持ち掛けられました

鍋いっぱいの料理がぺろりと平らげられて、綺麗に空になった。



「………夕食分も作ったつもりだったんだが、足りなかったか………」



「すみません。美味しすぎて手が止まらなくて。洗い物はわたしがしますので」



「ここ、水も何もないですけど」



「水魔法ならそこそこ使えますので、平気ですよ」



「ユニっ……お手伝い、するっ…!」



ハインが器を重ねて鍋のなかに入れたあと、軽い足取りでキッチンの方へ消えていく。その後ろをとたたた、とユニが追いかけていった。残されたカイトは、ベッドから起き上がったままのティオに声をかけた。



「それじゃ、腹も膨れたところで休んだらいいよ」



「いいえ。その前にすることがあるわ」



ティオがかぶりを振ってそう言うので、カイトは首をかしげる。そんなカイトに真剣な眼差しを向けて、ティオは言葉を続けた。



「身体が回復したら、ハーブのことについて教えてほしいの」



「ハーブについて?」



「ええ。料理にどのように使うのか、どんなハーブがあるのか。そんな簡単なことだけでいい。代わりにある程度の期間手に入れたハーブを可能な限り安くあなたに売るわ」



強い眼差しで言葉を重ねられ、カイトは戸惑った。しかし、彼女の提案に意外とメリットがあるのでは、と思考が回り始める。



ハーブは確かに魅力的な素材だが、はっきり言ってカイトの知る食事ではそれほど高い頻度で使用するものではない。それに、ハーブがあることが知れた以上、カイトには以前の食生活を送れるようになるためにも、探さなければならない調味料が幾つもある。彼女がやる気なら、格安でハーブの栽培や加工をしてもらって、定期的に手に入るように恩を売っておけば損はない。



ーーーよし、やり方教えて後は任せよう。



考えが纏まれば早かった。



「いいよ。なら、元気になったらハーブについて教えてあげるよ」



「………いいの?」



呆気にとられたとでも言いたげな表情で、ティオが確認するように再度尋ねてくる。それに笑って頷くと、彼女は脱力して力なく笑った。



「こっちは図々しいって言われるのを承知で勇気だしたのに。あなた、変わってるわ」



「え、今俺、貶された?」



「まさか。底抜けのお人好しね、って誉めてるの」



「いや、誉められてる気が全然しないんだけど」



むしろ馬鹿にされてる気がするのだが。むくれるカイトに、ティオが言う。



「だって、今までの料理からは考えられない画期的な料理を作れるのよ? 普通なら物凄い高額でレシピを売るか、あるいは独占販売で価値を高めてモノ自体を売り捌くわよ」



「………そんなことして恨み買ったら後が怖いだろ。大体、故郷では普通に売られてたものだ。レシピも俺が考えたものじゃない」



「それでも、ハーブを知ってるのはこの街ではきっと、あなただけだわ。だからハーブをどう扱うかも、あなた次第」



「………いや、だからってそれで威張ったら格好悪いだろ。大体、そんなことしたら俺の嫌いなやつと同じ事するみたいでなんか嫌だ」



俺は上司なんだと威張り散らして、部下にこなしきれない作業を押し付けるような部長を思い出し、それを自分に置き換えて考えただけで怖気が走る。



ーーーあんな反面教師の見本みたいな奴と同じなってたまるか。



声にこそ出さないが、脳裏を駆け抜けた思いを露にした表情が出たのか、カイトの顔を見つめていたティオが堪えきれないとばかりに笑い出した。



「っく、ふははっ! やっぱりあなた、変わってるわ!」



「いやお前、失礼だろ……」



呆れたように突っ込むカイトの後ろで、洗い物を終えて戻ってきたふたりがカイトたちを見て不思議そうに首を傾げた。







陽も沈む頃、カイトとハインは横に並び、ルイたちを連れてカイトの泊まる宿を目指しながらのんびりと帰途に就く。



「いや、まさかティオとユニの晩御飯つくるって言ったらハインさんが『金は出すから自分にもくれ』と言い出すとは」



道すがら、今日あった出来事を振り返るようにカイトは笑う。勿論カイトが表現したよりもずっと丁寧な言葉でハインは提案していたが、真面目だと思っていた相手の意外な一言にカイトは驚いたのだ。



「す、すみません。食にはあまり興味が持てなかったのですが、カイトさんの料理があまりにも美味しかったもので…」



恥ずかしそうに縮こまるハインに、そんなに恐縮しなくても、と笑いつつカイトは言う。



「いえ、助かりましたよ。正直、もうお金も底をついてたので、晩御飯の分用意できるか不安でしたし」



「そう言っていただけると助かります。夕食も、とても美味しかったです」



「殆ど昼と似たようなメニューでしたけどね」



「いえいえ、充分満足できるものでしたよ」




人参や大根など野菜をごろごろ入れて煮込んだ野菜たっぷりコンソメスープと、ハーブを混ぜ合わせたオムレツもどき、蛙肉から暴食豚(オブルークスース)の肉に変えただけの香草焼き。



ただ具材を変えただけじゃないかと言われそうなメニューを、口いっぱいに頬張って幸せそうに笑うユニや、それを世話しながらも未知の味を一口一口大事そうに食べるティオの様子を見ながら微笑んでいたが、ハインも充分に夕食を堪能していたらしい。



「カイトさんはどこで料理の腕を磨いたんです?」



「俺は母親が料理好きなのがきっかけですね。小さい頃から料理の手伝いをしてるうちになんとなく」



「素晴らしいお母様ですね」



「はい。おかげでこちらに来ても故郷の料理を作れるので助かりましたよ。まぁ、まだまだ足りないですが」



苦笑するカイトに、ハインは首を傾げた。



「何が足りないのでしょう?」



「故郷では肉や野菜にいろんな味付けをするために塩やハーブ以外にもいろんな調味料が開発されてたんですよ。それがないから、まだほんの少ししか再現できるものがなくて」



「あれだけでなくまだ他にもレパートリーがあるのですか。凄まじいですね」



「美食家、なんて名乗る人が大勢いるようなところでしたから」



「それはそれは。余程の美食を誇るところだったのでしょうね」



感嘆するハインに、カイトは笑う。



「ハーブみたいに故郷にあるものと同じ調味料が見つかったら、またご馳走しますよ」



「それは楽しみです」



そうこう言っているうちに、宿へ辿り着いて二人は別れた。カイトは夕食を断り、そのまま厩舎へと足を運ぶ。



ルイたちにぎゅうぎゅうとくっつかれつつ、目を閉じたカイトは、今日は幸せな気持ちで眠れそうだと思いつつ微睡みの海に身を委ねた。

なんかティオやハインと会話するだけでルイたちと絡ませられなかった。そろそろ頭回らなくなってきたか……?



更新が四日連続続けられるだけで個人的には快挙です! こんな調子で更新したいですが、なかなか難しいですね。調子いいうちになるだけ書き込まないと。



というか戦ってもいないのに魔物の名前ばかり考えている。あれー、おかしいな? どこからこうなった。



ま、まぁ。またバトルの時に出せる魔物が増えたと割り切ろう。弊害があるわけでもないし。



それでは皆様、本作品をお読み頂きありがとうございます!



ではでは(^-^)/



追記


なんか変なところで文章切れてましたごめんなさい!


速やかに修正しました!

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