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素材を出したらとても驚かれました

本日投稿二話目♪


まだ未読の方はひとつ前へお戻りください!

「もう帰ってきたのか。早いな」



「はい。この子達が薬草の匂いを覚えてくれて、わりと早くに採取できました」



「ほーぉ。優秀な獣魔たちだな。羨ましいよ。ーーーその鞄は?」



「あぁ、依頼達成の報告に行くのでカモフラージュに用意したやつです。丁度行商の方と帰りに会ったので」



作りはしっかりしているし、銅貨七枚と手頃な値段だったので即決で買った。元々持っていたように見せるには街中で買うより街の外で手に入れた方が良いと判断したためだ。



しかしロブは、別のことが気になったらしい。



「カモフラージュ、だと?」



「こういうこと、ですよ」



カイトが右掌を下にしてロブの手を左手で取ってネロに合図した。意を汲んだネロが影を伸ばして、右掌から銀貨を数枚落とす。左手に誘われて広げられていたロブの手に、それがしっかりと受け止められた。



「ーーーなるほど、な。確かに隠した方がいいだろうよ」



ロブがそう言いつつ銀貨をカイトの手に握らせてから手続きをしてくれる。ハインも奥から駆け足で出て来た。



手早く手続きを終え、ハインを連れてギルドへ向かう。



「あれ、意外と少ない……」



ギルドの扉を開け、朝に比べて随分人の減ったギルド内に、カイトは目を瞬かせた。



「普通は朝早くに依頼を受けて陽が落ちる頃に終えるくらいですから、今頃は割りと空いていますよ」



ハインの説明に、へぇ、と返事をしつつ、受付の列に並ぶ。すぐに目の前が捌けて、カイトの番になった。



「クラル草の採取依頼の報告です。ついでに、有用そうな素材や薬草採取時に出会った魔物の売却などもしたいんですが」



「承りました。では、まずクラル草をご提示ください」



肩に乗ったネロが影を伸ばす。カイトが鞄の中へ手を入れ、掌を伝って出てきた薬草をさも鞄から出したように見せかけつつ乗せていく。



どさどさどさ、と積み上げられていく薬草の数に、受付の女性が顔をひきつらせた。他の受付や冒険者たちも唖然とした顔でこちらを見ている。



ーーーもしかして、やらかした?



ルイたちが簡単に見つけ出してくれるので調子に乗って採取したが、一人で刈る量じゃなかったかもしれない。なかったことにしようかとネロに半分ほど片付けるよう囁こうかと思った矢先、正面から全力で叫ばれた。



「いったいどうやったらこんなに採ってこられるんです?! というか異空間収納魔法付の鞄!? しかも新鮮ってことは時間停止も保持してるってことですよね!?」



「え? あ、え?」



立ち上がった女性に噛みつく勢いで顔を寄せられ、思わず仰け反るカイトである。ネロが『この人怖いにゃ』と幻獣なのに迫力に怯えるので、思わず俺も、と言いそうになったのをカイトはすんでで堪えた。



カイトの腰が引けているのに気づいたのか、受付嬢は腰を下ろし、居住まいを正してから軽く咳払いをすると、にっこりと笑った。



「カイトさんでしたね? こちら鑑定に回しますが、他にも素材を持ってきたと言ってましたね? どんなものが、どれほどあります?」



にこやかなのに迫力満点な笑みに、カイトは顔をひきつらせたまま応じる。



「り、量はちょっと分かりませんが、採取したのはレムングーア、シュラーフモグ、オスクロモス、パナシアフルといった素材や、アルミラージ、犬人(コボルト)緑狼(ヴェルデウルフ)盗人猿(ヴォールマンキー)……とか、だったかと」



採取の合間合間にアルが報告を入れてくれていたが、害にならなかったので特に気にもしなかった魔獣の数々の名前を覚えている限り口にすると、受付嬢は深く息をついてこちらを見上げた。



「カイトさん。申し訳ありませんが、解体場までお越し下さい。また、ニーヴ草やレムングーアなどは専門の人間の手が空くまで鞄から出さないようお願いいたします」



「は、はい」



「では、こちらへ」



案内についていきながら、カイトはこっそりハインに尋ねる。



「俺、大変なこと仕出かしました?」



「……………まぁ、ある意味では、そうなりますね」



苦笑とともに返ってきた答えに、カイトは早くもやらかしたことを後悔し始めた。








「………改めて見ても、相当な量ですね」



受付で対応してくれてからずっとカイトの対応に明け暮れている女性が、ネロが出した素材の数々に感嘆の息をつく。



「カイトさんの異空間収納鞄はかなりの量なんですね」



「え、えぇ。まぁ」



本当はネロの力なのだが、余計なことを言ってレンだけでなくネロまで狙われては堪らないので沈黙するしかない。曖昧に笑って誤魔化すカイトである。



「しかもパナシアフルが三つもあるなんて。ひとつ見つければ相当ラッキーなのに、よく見つけましたね」



「あぁ、それはこの子達が優秀なんですよ。最初に俺が見つけたら、その匂いを覚えて探し当ててくれて」



「探索まで出来るんですか。すごい獣魔ちゃんたちですね、ほんと」



「はい。自慢の子達です」



胸を張るカイトの両肩の上で、『えっへん、だキュー』『照れるのにゃー』と鳴くレンとネロの声に、思わずはにかむカイトである。



「ですが、量が量だけに本日中にはすべて査定はできません。明日改めて査定額をお支払い致しますので、本日のところはお帰り願えませんか」



「……そ、そうなりますか。うーん、でもそろそろお金が失くなりそうなんですが」



「でしたら、現時点で査定の終わった分だけお支払いできるよう確認して参ります」



頭を下げた女性が足早に去ると、隣で控えていたハインが穏やかに言葉を投げ掛けてくる。



「もうお得意様扱いとは。余程逃したくないと見えます」



「え? お得意様、とは?」



首を傾げたカイトに、にこやかにハインは説明をしてくれる。



「今日1日で他の冒険者数人分以上の成果を上げた期待の新人に、他国へ行ってほしくないんでしょう。有能な冒険者がいるということは、それだけギルドにとっても有益になりますし」



「な、なるほど」



「勿論、自分たち騎士も冒険者が活躍してくれることで治安維持に力を入れやすくなるのでとても助かりますよ。ですので、今後も良い関係を築けると良いですね」



「それ、俺に言っていいことなんですか……?」



「カイトさんのこと、信頼してますから」



にっこりと笑うハインに、これは裏切れないと思うカイトである。おそらく、カイトのそんな性格を分かった上での説明だったのだろうが。



そんなやりとりをしているうちに、女性が紙と小袋を手に戻ってきた。



「確認しました。クラル草が3ギレム、オスクロモスが450クレム、パナシアフル3つで査定額は金貨六枚と銀貨三枚になります。内約はこちらです」



「パナシアフルがひとつ金貨二枚、ですか。高いですね」



「それだけ貴重な花ですから。また、魔法で新鮮な状態を保持して持ってきていただけたので、その分も加味した金額になっています」



他クラル草が3ギレムーーー約3キロで銀貨二枚分、オスクロモスが450クレムーーー約450グラムで銅貨三枚である。渡された紙に書かれた内容を眺め、ネロの力によって銅貨七枚分切り上げてくれたのだと理解した。



「ありがとうございます。これくらいあれば充分です」



会釈をしてギルドから出るため受付のある表側のエリアへ出ると、すぐさまこちらに冒険者たちの視線が集中した。思わず立ち止まったカイトの耳に、興奮からか羨望からか、声を潜めきれていない冒険者たちの言葉の応酬が飛び込んでくる。



「あれが例の?」



「そうそう。初っぱなからかなりの依頼量の薬草と魔獣持ってきた期待の新人だってよ」



「しかも時空魔法持ちで異空間収納も持ってるって? かなりのやり手だな」



「いや魔法じゃなくて鞄な。相当高価なやつだろあれ」



「俺のパーティ入ってくんないかな。荷物持ちとして」



「テイマーだろ? 食費バカになんないって」



「てか連れてる魔獣も異常だろ。相当な腕利きじゃね?」



「いや、でも近接戦闘訓練受けてたらしいし、魔獣頼りで戦闘の腕はからっきしだろ」



聞こえてきた言葉の数々に恥ずかしくなり、俯き気味にギルドを後にする。明日もこんな風に注目されてしまうのだろうかと少し遠い目になりつつ、カイトの初依頼はあわただしく終了した。

というわけで、初依頼完遂しました。



周りに羨望、嫉妬などの諸々の視線を向けられつつ、少しずつ依頼をこれからこなしていきます。



どうぞカイトたちを温かな目で見守ってあげてください。



今回出た単位ーーーギレム、クレム。

1ギレム約1キロ。正確には0、97キロくらいで少し少ないです。1クレム約1グラム。0、97グラムですね。こちらの世界では少し少ない計算です。

端数は考えると小数点単位になるので大体の単位で今後も書いていきます。

そこまで考えられるほど数学の成績は芳しくない。

ならなぜこんな細かく設定したと言われると、単に世界が違えば重さの定義も違うだろ、という価値観ゆえです。つまり深く考えて設定はしていない(おい



それでは、今回も読んでいただきありがとうございましたー(*´▽`*)

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