96.その名を月影
2年が空いてしまいしたがこれから少しづつ投稿していきます。
お待たせしてしまい申し訳ありません。
しばらく待っていると地下牢の扉の奥から看守とは違う気配を感じた。すごい勢いで近づいて来たので思わず臨戦態勢を取ったが仮面を着けた女の人は鉄柵越しに僕の目の前で跪いた。
「あなたがアクア様のお仲間ですね。人手が必要とお聞きしました。」
「君が応援に来た人?僕はイロアスだよ。もう一人いるけど……今は寝てるからまた後で紹介するよ。あとは、コマンド共有できる?」
【近い範囲なら我が直接移動できる。】
「じゃあ、コマンドを渡すからそれで連絡を取ろう。君、名前は?」
「我々は月影。私の事は新月とお呼びください。」
「うん、よろしくね新月。他のみんなにもよろしく伝えて。」
僕は見送りの言葉をかけたつもりだったけど新月は動こうとしなかった。どうしたのと声をかけようとしたが新月は僕の顔をじっと見て口を開いた。
「……我々を信じるのですか?」
「だって信じる人いないもん。たとえ君たちが敵だとしても僕たちは信じるもののために戦ってぶっ飛ばすだけだ!」
今は達成できる明確な目標はないけど今を精一杯足掻くしかないんだ。人が困っている事は手を貸す。悪事は止める。そうじゃないと今よりももっと酷い事になる。それこそ世界をひっくり返すような事になれば……全部を止めるのは不可能だけど目の前をなんとかしたい。
「やはり私の主が信じた者、月影を束ねる者としてあなたを信じます。それでは後ほど。」
新月はその場から姿を消すように走って行った。うん、信用はしてもらえたみたいだね、とりあえずしばらく待ってから連絡しよう。
数分後に連絡をしてみた。
ーー
『新月』にコールします。
…………
「こちら新月。イロアス様ですね。」
ーー
「あー、様付けはいらないよ。じゃあ、作戦を説明するよ。………………」
僕は新月に作戦を説明した。ふふふ、実はドラゴンたちの仕組みをムーンの探索記録で分かっちゃったんだよねー。ドラゴンは強い本能を持ってるから自分から人間を主と呼んだりしない、それも互いに信頼がないとね。つまりは何か制御をする装置的な何かが着けられているはず。それも一度に沢山のドラゴンを制御するものが。
(月影たちにはそれを破壊するように頼むのか。あたいたちはどうするんだい?)
「ムーン起きてたんだ。違うよ、月影たちにはドラゴンの兵士たちが屋敷に来るのを妨害して欲しいんだ。僕は魔法陣を自力で破ってドラゴンを操作する何かしらを破壊する!」
(ゴリ押しするつもりかよ……まあ、いいよ魔法陣破りのやり方くらい教えてやる。でも負けるなよ。)
「もちろん!」
ムーンも自己紹介をして作戦を説明した。
そうこうしてる内に夜になって僕は牢屋から連れ出された。いよいよ作戦開始だ!
乱雑に扱われて長くて暗い石畳の廊下を通ると広い部屋に出た。そこにはいかにも怪しげな魔法陣と派手な服を来たおじさんがいた。
「君がドラゴンの適正が100%の戦士か。」
「僕をどうするつもりだ……何故こんな事をするんだ!」
もちろん猿芝居だけどね、ムーン仕込みの演技力は中々のもんだ。指導中にズタボロにされたけどね。
「君がコソコソを私の事を探っていたのは知っている。誰の差し金か知らないが君は私の兵士になってもらう。私がこの世界を支配するためのな!」
やっぱりダメだこいつ、早くなんとかしないと!
「始めよう、新たなドラゴン誕生の儀式を!」
魔法陣が僕の身体を覆って締め付けた。
けど、僕は何ともなかった。どうやら元からドラゴンの自分には効かないならしい。このままだとバレるな。擬人化のレベルを下げてドラゴンっぽくなろう。擬人化Lv.1くらいがいいかな。
「はああ……素晴らしい!なんと勇ましいドラゴンだ!」
うん、何ともない。ムーンの術破りの方法を教わっといてよかった。
「……………もしかしかして僕がいつドラゴンになったって錯覚した?」
「なに!?」
作戦開始!月影たち!頑張ってね!
ーー
「承知しました。イロアスもお気をつけて。どうか生き延びてください。」
ーー
お互いに集中できるように通信を切った。
ムーン、いける?
(ああ、バッチリだよ!さて、一暴れしますかね!【エレメントマジック"炎"】!)
ムーンが炎を放って部屋が一気に明るくなった。この地下室、意外と広いな。これなら暴れてもいいだろう。
そうだ、あれを試してみよう。
「ムーン、ちょっとぶっ飛ぶから気をつけてね!」
ーー
BRAVERY CHARGE
120% BREAK!
ーー
臨界点になるとどうなるか……ここで試してやる!
(おいマジかよ!ちょっと待て!)
「勇気爆発!【ブレイブダウン】!」
僕は臨界まで達した勇気を全身から放出した。勇気は急速に減ってすぐにゼロになった。
ドラゴンたちは全員吹き飛ばされて倒れていた。一応成功かな。でもこれ疲れる……
「ええい!兵はまだか!ドラゴンだぞ!最強のドラゴンがなぜここに来ない!」
(そんな難しい事でもないだろ、あんたの兵たちは足止めされてるってことさ。さっさと降伏して……)
「我は諦めんぞおおおお!!!!」
ドランは手に持った杖を振りかざすと天井が崩れてきた。