91.水の報告
やっほー!みんな覚えてる?忘れたとは言わせないわよ!
あっ、忘れてた?それは辛いなあ……
私はアクア、世にも珍しい絶滅種ドラゴンで元人間の賢者よ。そして勇者様の仲間!今は別動体として勇者様と情報交換中。
ーー
「……それで僕はイロアスって名前になって、新しくランドドラゴンと勇気の力を手に入れたってこと。色々あってムーンもソウルの力を手に入れたし強化かなり強くなったんだ。」
ーー
「へぇー勇者様はどんどん成長してすごいなぁ……」
ーー
「アクアの方はどう?あれからどこに向かったの?」
ーー
「私は噂を頼りにシャインとダークが居るっていう明暗の森に来てるんだけど……迷っちゃったみたい。」
ーー
「まじで!?コマンドヘルプ!」
【助けが必要かアクア?】
ーー
「だっ!大丈夫よ!?それにこの森からは外の気配を感じないの。きっとコマンドもここには来られないわ。」
ーー
「そっか……分かった。外に出たら連絡して。じゃあ気をつけてね。」
【我は我の無力さを恨もう。アクアよ、気をつけて進め。】
ーー
「もちろんよ、またね。」
ーー
通信が切れました。
ーー
さてと、ここからどう進もうかしら……闇雲に進んでもまた迷うだけだし進み方を考えないと。
木に印を付けてもすぐに消えちゃうし……そうだ!魔力を残しておけば道に迷うこともない!早速進もう!
数分後…
「迷った……魔力かなり使っちゃったし、これからどうしよう……もう帰れないのかな……」
普段なら遠くまで気配を察知できるから怖くなかったけどこんな鬱蒼した森じゃ気配察知も難しいわ……
でもこの感覚は懐かしいわね。人間のときと同じ一寸先は闇って感じ……でも人間だった頃の私とは違う。体力も力も有り余ってる。私もまだヴェロシラプトルの力に振り回されてる……しっかりしなきゃ!古代竜の魂に笑われちゃう!
勇気を出して進むと森が開けて草原に出た。草原の真ん中には花畑があって2匹のドラゴンがいた。白いドラゴンと黒いドラゴン……噂通りね、シャインとダーク。でも……シャインの方に違和感を感じるわね。なんかこう、光の力を感じない?
【困り事か?】
「コマンド?なんだかシャインの雰囲気が違うの。調べてくれない?」
【ふむ、ではシャインの身体に直接触れるんだ。身体データから種族等を検索しよう。】
「了解。あのー!シャイン!ダーク!」
シャインとダークを呼ぶとダークの姿が消えて強い気配を感じてとっさに【防壁呪文】で壁を作ると砕けて吹き飛ばされた。
「名はアクアか。悪魔の仲間、ここで排除する。」
「えっ!?待ってダーク!私はあなたと戦う気はないの!」
「ならばシャインだろう?連れ去るのは目に見えている!」
ダメみたい。向こうが話す気がないんじゃ交渉が成立しない!
「私はあなたと戦う気はないわ!さよなら!【幻惑呪文】!」
「今逃がしたらお前は再びここに来るだろう。それに俺にその呪文は効かない。」
森に向かって走った私をダークはすんなりと幻惑を通り抜けて捕まえた。そっか、ダークは目が見えないから幻惑なんて意味がないんだった。
「さあ、お前がここに来た理由を話してもらおうか悪魔の仲間。」
「理由なんて……私はただあなたたちを見に来ただけ!それ以上も無いわ。あわよくば勇者様について弁明したかったのよ!」
「何?」
その瞬間、ダークの目が揺らいだ気がした。
「ダーク、耳を傾けないて!彼女はあなたを惑わせているわ!」
シャインの声に反応するかのようにダークのくびかざりが妖しく光った。まさかダークはあのくびかざりに操られて……
「うぉぉおおおおおおお!!!!!」
ヤケクソの攻撃!?多少は巻き込まれるけどそんな事言ってる場合じゃない!
「私も背中任されてるから負けられないの!【照明呪文】【カケ】【月光呪文】ええいっ!【照明月光呪文】!」
指先から強い光を放って彼らが怯んだ隙に逃げ出した。
「ヤバかった、あそこまで危険を感じたのは初めてだったわ。でも肝心なことが分からずじまいだわトホホ……」
【そうでも無い。お前がダークを振り払ったときにあの首飾りに触れたんだ。データは手に入ったぞ。】
「ホントに!?よかった……」
【だが入手したデータが不明な言語で書かれていて解析には時間がかかりそうだ。】
「そう……私も早くここから脱出しないと。ありがとうコマンド、ここからは私だけで大丈夫よ。」
【うむ、だが迷って抜け出せないのは無しで頼む。】
「もちろんよ!」
しばらくするとコマンドの気配は無くなった。ダークは目が見えなかったけど耳がすごく良かった。きっと私のことはいつでも追いかけられる。でもシャインが止めたんでしょう。
シャイン……絶対怪しい、何かある。
このことでダークとシャインには私の事がバレた。なら行動できるのは……気が乗らないけどあそこしか無いわね。
あの学校ならコマンドの言ってた言語も分かるかも知れない。私に今できる最善の事に尽くしましょう。
急がないとダークも他の属性竜たちも危ないかもしれない。
「誰か……」
誰かの声が聞こえた気がした。
私は全ての考えを振り切っその方向に向かって走った。