90.勇気は奮い起てれば誰にでもある
その後、多少ごたついたけどなんとか全員助けることができた。
身体に勇気を流すと勝手に消えた。
けど、終族の気配は完全に消えた訳じゃない。まだとこかに潜んでるはずだ。でもどうすれば…
(相棒、これ以上はここに加担するな。あとはこいつらの問題だ。)
「でも…」
「僕らは大丈夫だよ。対処の仕方は分かったんだ、僕は人間たちと協力してこの森と町を守る。」
(…ということだ。あたいたちが先を急がないとこいつらみたいに被害者が増えるだけだよ?日も暮れたから明日に挨拶回りをして出立するよ。しっかり休め、相棒。)
確かにほとんど休めてないから流石に疲れた…
スィールバとムーンもこう言ってくれてるし、先に休ませてもらおう。
横になって周りが静かになったと思うと誰かが部屋に入ってきた。
この部屋は自分とムーンくらいしか入らないはずだ。じゃあ…僕の寝首を欠こうとするヤツ?
「勇者、寝たままで良いから聞いてくれ。」
「その声…ガイウス?」
「ああ、お前を身近に見てようやく分かった。お前は私が思ったよりも人間らしい。ドラゴンの大半のドラゴンとは全く似ても似つかないな。」
ガイウスはもしかして僕の正体に気づいた?そうだとしたらマズイな…僕が人間であることをバラされたらモンスターたちの協力を得られなくなるかもしれない。
「まさか読唇術?」
「いいや、真相は私自身の目で確かめたかったんだ。いくら【千里眼】を駆使してもその者の本質は見抜けないからな。一番分かったのはお前は自己犠牲が過ぎることだ。」
「でも、僕が頑張らないと…」
「お前はよく幽霊に言われているが少しは気を休めろ。常に終族があらわれる訳ではない。導く者がそうでは誰もついてこないぞ。一匹で頑張らずとも友も仲間もお前を信じて手を貸してくれる。誰かに言われてないか?」
それは…言い返せないや…
「言われているんだな…終族は世界の問題だ。この世界は我々のモノだ早々に明け渡す訳にはいかない。」
「我々?」
我々…そうか、元々地上には終族は居なかった。突然外来種がやってきたらまずは追い出そうとするよね…
僕は終族のみんなも助けたい。でもこの世界に生まれ落ちたならこの世界の勇者なんだ。沢山の命を背負ってる。とても逃げられない…
「そうだよね。やっぱり僕がみんなを導く旗にならないと。ガイウスは僕がどんな職業か知ってる?」
「勇者であろう?その力は数人しか使ったことがないからな。」
「今までに?ガイウスは勇気を知ってるの?」
「詳何らかの方法で得られる力ということしか知らんな。ただ、終族に最も有効な力と認識している。」
ディレクの言い方的には僕は何人もの中から選ばれた1人みたいだったけどそうじゃ無かったらしい。冒険の書の記述…転生した人間は11人いるの、あれは合ってたんだな。
「お前が世界を取り戻す力を持つならば私も協力しよう。」
「いいの?」
「ああ、私ならば戦力となるだろう。最も、私の力が終族に対抗できるほどあるかは疑問だが…いざとなれば加勢しよう。」
「助かるよ。おやすみガイウス。」
「あ、ああおやすみ。」
ガイウスは部屋を出て扉を閉めるのを確認すると僕は布団に潜った。
翌日、俺は森を出て次の目的地に向かって飛んでいた。ヒデヨさんたちは
「次は確か…」
(火山町キラウエアだ。噂じゃあドラゴンが沢山住んでるらしい。ドラゴンが生活の一部になるくらいらしい。もしかしたら属性竜の弟子もいるかもな。)
「………」
自分はふと後ろを振り返った。
(あいつらが気になるのかい?)
「うん…」
(あんたは勇気があんたにしかないと思ってるのかい?)
「そんなことないよ!ただ、みんなは勇気のことを知らなかったから…勇気を覚えられるのかなって…」
(あの森には勇敢なヤツらが山ほど居ただろ?なら大丈夫だ。特にスィールバ、あいつは信頼も厚いしそのうち勇気も覚えられるだろ?)
あとは神のみぞ知るか…いいや、ディレクは知ってるのか?ディレクでも知らないかもしれない…
まあ、そこは気にしなくていいや。頑張ろう。僕は羽ばたいて加速した。
しばらく飛んでいると嵐に遭遇してしまってちょうどいい洞穴に隠れた。
「嵐過ぎるまでここで待つ?」
(そうだねぇ。嵐なんて久々に遭遇したよ。)
「ムーンは嵐を通ったことあるの?」
(逆に600年生きてて嵐に遭遇しない方法を教えて欲しいよ。急いでるときは突っ切る。邪魔なときは吹き飛ばすこともある。)
「私情で天変地異を起こされたらたまったもんじゃないよ……」
相変わらず横暴なムーンに苦笑いしながら僕は気になったことを聞くことにした。
「ムーンは600年生きててさ、なんかこの世界で嫌だなーって思ったことあった?」
(無いって言ったら?)
「驚く。」
(率直だね。嫌なこと……この世界を誰かの監視下にあるってことだね。)
「もしかして、ディレクのこと?」
(多分な。あんたと会って確信したけどずっと見てられるってなんか嫌なんだよ。たまに視線を感じて集中できない事もあるし、なんか……自由って感じがしないんだ。)
「ムーン、君は……」
落ち着いて考えればゲームのキャラクターが自分で考えて自由に行動を取るなんておかしい。それってシンギュラリティなんじゃ……
もしかしてディレクの狙いってシンギュラリティが起こったこのゲームを停止させること?
じゃあ終族の存在って一体……
(おっ、嵐は過ぎたな。予定より遅れるかもな……急ぐぞ相棒。)
「あ、うん。」
結論を出すには情報が少ない。自分たちは終族について何も知らないんだ。なるべく急がないとこの世界は僕らが思っている以上に危機に瀕しているかもしれない。
アクア、無事だといいんだけど……