83.作戦遂行
僕はマッピングされていない場所で何かないかと歩きまわったが奴隷たちはみつからなかった。
「ルナ、そっちはどう?」
(相変わらずだよ、聞いてきたってことはそっちも見つかってないんだね?じゃあひと暴れするか。)
「そんなことしたら奴隷たちが…」
(大丈夫だ。あたいたちが暴れれば大事な商品を連れて逃げるか自爆の命令を出す。つまりおのずと隠し場所も見つかるって寸法だ。そこをあたいが叩いて奪うんだ。そうなったら首輪のカギが必要だ。一番偉いヤツか監視してるヤツが持ってそうだけどな。暴れるのが嫌なら見取り図を探せ。洞窟ならどのルートを進めばそこに着くか記録してあるはずだ。ついでに探してみるといい。)
「カギと見取り図…探してみるよ。」
(あんまり時間をかけるなよ?)
僕は【真実の羅針盤】を頼りに進んだ。
たどり着いたのは行き止まりだったが、何かの部屋のようだ。
少し調べるとカギが見つかった。見取り図は…すぐにはみつからなかった。仕方ない、暴れるか。
(どうしたフューチャー?暴れるのか?)
「ああ。」
(了解!絶対に捕まるなよ?)
【囲まれれば不利になるからな敵の位置関係に気をつけて進め。】
「了解!」
さっき敵と会った地点に向かうとどこかで爆発が起こった。
「敵襲!敵襲!」
「さっきのドラゴンは?」
「ダメだ。今は侵入者を探せ!入り口は一つしかないんだ奴隷にも徘徊させて見つけたら自爆するように命令するらしい。死体が見つかるのも時間の問題だな。」
こいつら…人間じゃねえ、終族の方がよっぽどマシだろこれ。
僕は人間がどこかに行くのを待って連絡した。
「ルナ、向こうは侵入者を血眼で探してるけど…」
(ああ、奴隷を使ってるな。ちょうど解析も終わったから情報をまとめよう。自爆指令も出してるから近づかれたらひとたまりもない。けど、眠らせれば爆発することもない。カギを使えば首輪も外せる。外した首輪は爆発することもないから安心しろ。)
「ええっ!?そんな急に…」
(じゃあ…もし首輪が起動したら10秒で爆発するからすぐに首輪を無理やり外してぶん投げろ。代わりに敵を呼んじまうけどなそこはなんとかしろ。じゃあ頑張れ。)
ムーンとの通信はすぐに切れた。
この状況をなんとかしろって…頑張ってみるか。
でもどうやって眠らせれば…
【【雷鳴呪文】を弱めて首に当てれば気絶するだろう。さじ加減はフューチャーがなんとかしろ。】
「二人とも丸投げって…分かったよ。」
(なんか言ったか?)
「ヴェッ!ナンデモナイ!」
(?)
【雷鳴呪文】…スタンガンみたいに気絶させるのか。まだ魔法については調整の練習をやったことないから大丈夫かな?音も光もなるべく抑えてすぐに気絶させないと。逆に見つかって首輪を破壊するのも悪くない。そこは現場で判断だね。
「あっ、ドラゴン…」
見つかったか!男の子の首輪からカチリという音がして爆発までの秒読みが始まった。
「動くな!すぐに済ませる。」
「ひっ!」
僕は首輪を引き千切って投げると爆発した。
「大丈夫?手荒にしてごめんね。」
「あ…ああ…」
怯えてる…まあ殺される前提でここにいるんだし食われると思っても仕方ないか。ここで複数人をつれ歩いて行くのは愚作だ。一旦奴隷たちを脱出させたい所だけど…買っておいた脱出用の道具、エスケープタロットは12枚だけだ。救出する人数も分からないからなるべく脱出用に残しておきたい。複数人同時に脱出もできるからまとめて逃がすことができれば…
考えろ…安全で見つからずに複数人の奴隷を誘い出す方法を!
「いたぞ!商品を喰われてたまるか!」
「しまった!伏せて!【雷鳴呪文】!」
少し焦がしてしまったけど死んではいないな。でも音で誰かが来そうだ。
…そうだ、音や匂いを使えば誰か気づく。それを利用すれば奴隷や敵を誘き出せるかもしれない。
「セレクト、どう思う?」
【良い作戦だ。敵を誘き出せるポイントを検索しよう。無駄に呪文を打ってMPを無駄に消費する必要はない。フューチャーはそんなことをするバカではないだろう?】
「ありがとう、依頼に戻る。」
しばらくは彼を連れて行動しないといけないな。けど奴隷たちは疲弊してるから歩いていたら時間がかかる。背中に乗ってもらうのが一番だけど乗せすぎると動きが鈍くなるから4人乗せればほとんど動けなくなるだろう。リスクはあるけど絶対に全員助けよう。
ムーンから連絡がきたので隠れて応答した。
(フューチャー、捕まってる奴隷は8人程度だ。4人はこっちでなんとかしてやる。そっちの4人は任せた。)
それだけ言ってムーンは通信を切った。4人か…なら大丈夫だな。油断は禁物だけどやってみるか。
行動開始!まずは…誰かを呼ぼう【ちょっと雷鳴呪文】!
辺りに雷鳴が響く………誰か気づいたようだ。
「何だ今の音は?」
敵を呼んだか、倒すか?…ここで気絶させれば探索が楽になるな。倒してしまおう!
「動くな!」
「ひっ!ドラゴン!」
その人は武器を置いて手を上げた。どうやら力量差を理解してるらしい。これって…尋問ってヤツだよね?質問してもいいんだよね?
「お前の知っていることを言え。」
「お前らに話すことはない。部外者は帰れとお前の主に言っておけ。」
「…残念だけどそうはいかない。僕にもそれなりの覚悟があるからね。」
「…お前も奴隷か?」
「僕に質問をするな。君は僕の質問に答えればいいんだ。そうすれば命は助ける。」
僕はそいつの首筋に爪を当てた。