79.それぞれの時間の使い道
ものすごく色々あって全然休めてないけどそろそろまともな装備が欲しい所だし資金も集めないと。
「今日はクエストに行くけどムーンはどうする?」
(あたいは予定があるからパス。協力を得るにはそれなりの報酬がいるからな。)
「分かった。じゃあ今度こそ戻って来てね。」
(りょーかい。)
僕は酒場に向かってムーンは壁を通り抜けて行った。
酒場の掲示板まで来たけど昨日の今日で疲れぎみだし、難しいクエストは受けないようにしよう。
となると薬草と鉱石の収拾かな。
【では我が手ごろなクエストを選出しよう。】
「ありがとう!やっぱり持つべきは仲間だね!」
コマンドが選んでくれたクエストを受けて目的地に向かった。
受けたクエストは地域調査とそこに生えている薬草の採集だ。
岸壁に生えていることが多くて採集が難しいと記載していたから普通の人だとなかなか厳しい依頼なんだろう。
でもその割にはランクが低い。初心者冒険者への挑戦状と言った所か。
依頼の場所は木が少ない山岳地帯だった。
【依頼書によれば地表の一部が地雷のようになっている場所がある様だ。今回はその地雷の一部を回収すること。それほどダメージはないが吹き飛ばされて鋭い岩に貫かれたという事例があったらしい。】
「冒険者を怖がらせるウソかもしれないけど想像しただけで寒気がするよ…取り扱いに注意しないとね。」
【どうせ持っていくなら純度の高いものが良いだろう。】
僕はドラゴンになって飛んでいいかんじの地雷っぽい地表を回収した。
【ふむ、我の頑張りは全て無かったことにされたのか。】
「ごめん。最近はダラダラ進め過ぎたからちょっと省略するってさ。」
【…誰の言葉かは知らないがそれも仕方ないな。それよりも次だ。岸壁に生える薬草の採集だ。魔物に気をつけてながら進むぞ。】
山沿いを歩いていると何度か地雷を踏んで吹き飛ばされてしまった。
コマンドが拗ねて地雷の位置を教えてくれないからだ。
仕方なく飛んで避けることにした。飛ぶのは歩くより体力を使うから正直に言ったら走りたい。
まあ景色がいいから存外悪い気もしないけど。
「ねえコマンド?採集するのはどんな薬草なの?」
【ふむ指定された薬草は、星空のように光に隠れて花を咲かせる【天星菊】だ。そのまま使えば軽い麻痺や混乱を治療し、僅かに傷を回復させる。】
「そのまま使っても高い効果があるんだね。どんな薬になるの?」
【ふむ、普通はそのまま売られるが加工して【天星シロップ】としても販売される。薬としても調味料としても使える様だ。需要は高いが如何せん入手が難しく、市場に出回る数が少ないんだ。人工的に栽培もできるが…品質も天然モノには数段劣る。】
いわゆる高級品って分類。需要もあって天然モノは高級品か…沢山採りすぎるのは良くない、ある程度摘みとったら残りは放置しよう。
「ここと…これと…」
【イロアス、その部分も摘みとって構わん。】
「分かった。」
コマンドに協力してもらいながら約30本を集めた。
【これ以上摘み取れば生態系に影響が出る。後は花粉を集めてみよう。】
「花粉?僕花粉は苦手…鼻の調子がヤバいことになるから…」
【違う。我は一部の虫系のモンスターが収集している【花粉団子】のことだ。ほのかに甘く、モンスターの間では貴重な甘味として重宝されている。ただ、手に入れるには容易ではない。大半はモンスターの内で消費されるので人間が手に入れるのは困難だ。】
「価値はどうなのさ?」
【市場には出回らないから未知数だ。しかし、我々であれば手に入れることは容易なはず。】
「そうか!ムーンの友達!」
【…スィールバだ。】
ということでスィールバのいる森に行ってみることにした。
【しかしイロアス、あの森に行ってスィールバに会える保証もない。ただ時間を浪費するだけになるかもしれない。それでもいいのか?】
「いいよ。スィールバがどんなヤツなのか気になるし。森を駆け回ってたらその内会えるでしょ。」
そんな会話をしていると目的地の森に着いた。
【そういえば勇者よ、昨夜に【終末呪文】を受けたと言っていたが傷はどのように治したのだ?普通の回復魔法では治せないはずだが…】
「うーん…自分も正直よく覚えてないんだ。とにかく生きないとと思って勇気を使った所までは覚えてるんだけど…そこから先は何も。」
【ふむ…それも仕方ないな記録も残されていない。というより意図的に消された様な…】
「じゃあこれも全部ディレクってヤツのせいなんだ。」
【そう考えるのが妥当だろう。】
ディレクはどうして記録を消したんだろう?
知られたくないことでもあったのかな?
じゃあ今は知らなくていいや。また教えてくれるでしょ。
「それよりもスィールバ!どこにいるのかな?森が広いから見つけにくい…誰かに聞こうかな?」
まず森の中を歩いることにした。
「原生林ほどうっそうとしてないね。所々だけど木も切られてる。誰かが人為的に切ったんだろう、あと戦った跡もね…」
僕は獣道をたどって森の奥へ進んで行った…