76.月の限界
「ぐああっ!」
(勝機は見えねえけどやるしかねえ!)
あたいは木から飛び降りて終族に飛びついた。
[くっ、何者だ!]
「君はさっきの…」
(あたい、参上!誰だって良いだろ?あんた、大丈夫か?)
「うん…」
(あんたは下がってろ。何ならここに近づいて来るモンスター共を無力化しろ。)
「…分かった。見ず知らずでついさっき脅してきた人間を信じるのも難だけどここは任せるしかなさそうだ。」
(おう、任せた。【コマンド?】あいつの補助をしろ。)
ーー
ムーンの声紋を認証。
対象に特殊スキル【コマンド?】を与えます。
ーー
ちっ、コマンドは留守かよ。
大丈夫か…分かんねえけど、今は生きるか死ぬかの瀬戸際だ。気にしてる場合じゃねえ!生きねえと。
じゃあコマンド、奴の情報を教えてくれ。
【対象の情報が少ない。戦闘を続けて情報を得なければ。】
(戻ってたのかよ、てっきり死んだかと思ってたよ。)
【我の場合は"削除"であろう?】
(そうだったね、あんたが簡単に答えるってことは作戦はあるのかよ。)
【当然だ。我も気絶してなにも学んでいない訳ではない。少し時間を稼げ。その間に【EG-01α】を再調整をする。】
【EG-01α】…このシューターのことか。
(何をするかは知らねえけどあいつに勝てるなら頼んだよ。)
【了解した。全てのコマンドを遂行する。】
あたいはもう一度構え直した。
ーー
〖アングリーデーモン〗があらわれた!
【コマンド?】
ーー
▽たたかう
[どうした、一匹は怖じ気づいたか?]
(言っとけ、あいつにもやるべきことがあるんだ。どうでもいいからタイマン張らしてもらうよ。)
[タイマンを張る理由になってないと思うが、良いだろう。どのみち幽霊風情がこの我に勝てる訳がないのだからな。]
(過信や慢心は自分の強さを見失うぞ。まああたいは負ける気はしないけどな。【エレメントマジック"風"】おらあっ!)
呪文を唱えて飛んでいる終族に向かって風を放った。
[この程度、我には涼む程度にしかならんわ。]
(だったらなんだ。あたいの呪文はそんじょそこらの魔物とは一味違うぞ?森への被害は目をつむってくれよ!ぐるぐるぐるぐる!!!!)
呪文を唱えながらその場で踏ん張った。
[うおおおおぉぉおおっっっ!?]
(ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる!!!!!!!)
あたいを中心に凄まじい竜巻を起こした。終族は空中で体制を保てずに竜巻に巻き込まれた。
(吹っ飛べえええええぇぇえええ!!!!)
無理やり竜巻をねじ曲げて打ち上げた。
【作戦を言う。】
(早くしろ!奴が落ちてくる前にケリをつける!)
【EG-01αに勇気を溜めることができるように調整した。溜められるかは定かではないが使えば確実に終族を仕留められる!】
(分かった!)
▽どうぐ
あたいはシューターに勇気を込めようとした。
すると身体全体が光ってシューターに全部吸い込まれた。
【特殊効果【勇気+10%】は消滅した。一度使えばもう戻って来ないがそれでも良いのか?】
(勇気ってのはお守りじゃないんだ。いつか使うことにもなるしそのためのヤツだろ?今使わないでどうするんだ!オラアアアアァァアアア!!!)
地面を蹴って思いっきり跳んだ。
[幽霊風情がこの我を…許さん許さん許さん許さん許さん許さん!!!!!!]
(元より許されるつもりも無え!)
終族は黒い光をあたいに向かって撃った。
風を操ってギリギリでかわした。
(そおおぉおらっ【ブレイブシュート】!!)
目の前で撃った勇気は終族の胸に当たった。
あたいは勢いを失って地面に落ちた。
[ぐおおおおおぉおぉおぉぉおおお!!!!]
どうだ…
[貴様ああああぁああこの我に何をしたああぁああああ!!!]
あれで倒せるんじゃなかったのかよコマンド!
【勇者の【プラスブレイブ】より威力が劣るのか?想定外の事態だが確実に弱っている。】
(一撃で倒せるってことじゃないのか。不便だねえ?)
【…すまない。】
(贅沢も言ってられないけどな。とりあえずありがとう。情報違いの責任はこの戦闘で取り返せ。行くぞ!絶対にこいつを倒す!)
気合いを入れ直して構えた。
[殺す!殺す!殺す!【エンドブラスター】!!!]
(【エレメントマジック"光"】!!!ぬおおおりいぃぃやああぁあああ!!!!)
全力のエレメントマジックでも終族のとくぎと互角だった。
(これならどうだああああぁああ!!!キラーン!!)
分散した光で鏡を作って奴の攻撃を反射した。
[殺す!殺す!殺す!]
(怒るのも悪くないけど自我を忘れるほどかよ。まあいいさ、今ならあんたに負ける気はしない。というよりはいちいち負けてらんねえし!魂燃えてきたぜ!)
ーー
特殊スキル【月明かり】をおぼえた!
特殊効果【ロストソウル】をおぼえた!
SPを使えるようになった!
ーー
マジかよ…
ディレクは一体何を考えてるんだ?