66.超感覚
僕は壁を破れるドラゴンに超進化した。
風の流れ、木々のさざめき、モンスターたちの声…全てを聞き取れるブレスドラゴンだ。
今まで以上に意識を集中した。
風の流れ、周りの温度、ありとあらゆる感覚が研ぎ澄まされていた。
それと同時にあまりの情報量に意識が途切れそうになったがなんとか持ちこたえた。
僕の頭がオーバーフローしてる…まじつらたん。
【落ち着け勇者。必要な情報だけ聞き取ろうとするんだ。ふむ…これについての対策スキルを調べてみよう。】
僕は壁を殴って響いた音と前足から伝わる振動を感じた。
その中で響きが変な位置を特定した。
「そこだ!ブレス直伝【ストームエクストリーム】!」
僕はその位置に竜巻の拳撃をくりだすと壁一面にヒビが入って全て砕け散った。
「ムーン、僕参上だよ。」
(はは、おっせえよ。けど待ってたよ、相棒。)
ムーンはボロボロの満身創痍だった。
僕はムカデがムーンを攻撃しようとしていた所をブレス攻撃で凪ぎ払った。
もちろんムーンはゴーストになって避けている。
(気づくのに大分かかったな?もっと早く気づくと思ってた。)
「僕はムーンほどハイスペックじゃないよ…」
(知ってるよ、でも確実に来ると思ってた。仲間は見捨てないのがあんただからな。)
「全部お見通しってことか、さすがムーンだ。」
(まあ、壁全部ぶっ壊されたのは予想外だったけどな。)
ムーンは力でぶっ壊して来ると思ってたらしい。あの壁、相当分厚かったし硬すぎたし…ムーンも過大評価しすぎだよ。
ーー
同調率 50%
CHARGE!
ーー
(それよりも、折角まわってきたチャンスだ。逃すつもりじゃないよな?)
「それ、分かってて聞いてる?」
(そりゃそうだろ?行くぜ、相棒。)
「ああムーン。」
「(同調!)」
ムーンが僕の中に入って同調状態になった。
「一気に決めるよ。」
(ああ、そろそろ飽きてきた所だからね。)
僕たちは勇気を溜めて構えた。
ーー
BRAVERY CHARGE
20% CHARGE!
ーー
現状溜められる限界まで溜めて走った。
「小癪なああああ!!!!」
(【餓狼の爪撃】!)
「【マイティアタック】!僕たちのれんけい!」「(【クリムゾンアタック】!!!!)」
僕たちの一撃でムカデは反対の壁まで飛ばされた。
反動で硬直していると同調が解除された。一緒に特訓してようやくできたけどまだ完成とは言えないな。
(油断するな相棒、まだ終わってないよ。)
見ると、ムカデが起き上がっていた。まだ倒しきれてなかったってか?
僕たちはもう一度構えた。
「待って待って待って待って!!!!ごめんなさい!許して下さい!」
急に戦意が無くなったようで涙目で器用に土下座をしていた。
(今さら信用できるか!心ぶんどってやる!…って、こいつ既にキレイさっぱりな心じゃねえか。)
【みやぶる】で見ると確かに空のように真っ青に光っていたて本当のことしか言ってないようだ。
一体何がムカデを心変わりさせたんだろう?【真実の羅針盤】で覗くと何かを指し示した。
拾ってみると何かの破片だった。
ーー
【ウイルスのかけら】(だいじなもの)
世界のどこかにあるバグの原因
ーー
手に取ってみると所々文字化けしていてバグっていることがよく分かった。
じっと見ていたらこちらも呑まれそうになったから僕は慌ててふくろにしまった。
【解析をするが、これはデータが破損している。修復もしなければならないからその分も時間がかかるな。】
まあ、バグって書いてるし仕方ないか。
元々バグはデータの欠損とか不具合によるものだし…
「これもいいけど!早くスタンピードを止めないと!」
(何か言ったか?)
ムカデの方を振り返るとムーンがムカデを脅してスタンピードを解除させたところだった。
ムカデは泡を吹いて気絶している…
一体どんな脅しをしたんだろう?
(ふう、これで万事解決っと。)
「色々と解決してない気がするけど…」
(大元の事件が解決したらその前に起こったことは全部解決なんだよ。)
「ムーンらしいけど暴論が過ぎるよ…」
そんな話をしていると入ってきた扉が開いてポイズンと謎の狼が入ってきた。
「イロ大丈夫かいな!」
「ムーンよ無事か!」
(おう、結構満身創痍だけどな。てか隣の奴誰はだい?)
「「誰だよお前!」」
なるほど、知らないヤツが隣にいて知ってるヤツも近くにいるから混乱状態なんだろう。
「まあまあ落ち着いてポイズン。紹介するよこいつは僕の相棒のムーン。」
「なんやそういうことかいな!ワイはポイズンや!よろしくなムーンはん!」
(よ、よろしく。)
まずはポイズンからムーンに紹介。
ムーンも若干戸惑い気味のノリみたいだ。
「僕はイロアスだよ。君は?聞いたところムーンの知り合いみたいだけど…」
「ああ、わたしはシャドウ。ムーンより依頼を賜り、援護をしに来た。お前がムーンの相棒の勇者か…良い目をしているな。」
シャドウは僕に近づいてまじまじと観察していた。
「あ、うん。そう言う話は後にして一旦脱出しよう。シャドウ、味方のドラゴンはもう引き上げた?」
「ああ、既に退却命令を下した。」
「じゃあ出るよ、僕に捕まって!」
なんとかシャドウをはね除けて僕は【脱出呪文】をとなえてダンジョンから脱出した。