62.ポイズン
僕はうっすらと見えた日の光で目が覚めた。周りを見渡すといかにもって感じのツリーハウスの中にいた。
【起きたか。体調はどうだ?】
「コマンド?あれからどのくらい経った?」
【32時間37分00秒だ。】
「1日半ぐらい経ってる!?もうスタンピードが起こったんじゃ…」
「ここはあの場所を確認することができる。お前との交信の直前まで観察したが、動く気配はない。」
ならよかった。襲われたあととか言われたら飛んで向かうとこだった。
【止めはしないが危険だぞ?】
「そこは止めようよ。」
そんなことを言っていると下から何かを引きずる音が聞こえたので僕は身構えた。
けど、全く敵意を感じなかった。考えてみるとこのツリーハウスは明らかに人工物だ。つまり誰かがここに住んでいるはずだ。掃除もされていて生活感もある。
結論、今上がってきているのはここの家主だ。一体どんなヤツだろう?
「よお、目え覚めたみたいやね。どないなん、調子は?」
「ギャァァァァ!!!ヘビだぁぁぁぁ!!!」
「うるせぇぇぇぇ!!!」
「あっ、ごめん。」
「急に落ち着くな。」
階段からヘビが登ってきたことにびっくりして思わず悲鳴を上げてしまった。
ヘビ…だけど手がある。一応獣人って分類なのかな?
「あんさん、森のど真ん中でフラフラやったからワイが【催眠毒】で無理やり眠らしたんよ。ドラゴンやったし、助ける義理とかも無かったけど、ワイは助けたかったから助けたんや。ちいとは感謝してな。」
「ありがとう。」
「そんな素直に感謝されるとは思わなんだわ。」
というかこのヘビ、めっちゃ関西弁ー。めっちゃツッコミ入れてくるし、話が止まる気配がない。
「そんであんさんはどっから来たん?ここらの森でも見かけん顔やし、誰か産んだとかそんな話も全く聞いてないし、人間の連れって訳でも無さそうやし、なあなあ教えてや!」
「通りすがりの戦士だ。」
「あっさりした自己紹介やね。まあええけど、ワイはポイズン!」
「僕はイロアス。助けてくれてありがとう。」
「ええよそんなお礼なんか、ただのお節介やから。」
まさに関西人って感じだな。まあ自分も関西出身だし、人のこと言えないけどね。
「あんさん、冒険者やっとるらしいな。」
「何で知ってるの!?」
「ワイは耳が早いねん。道行く人間の話も聞き逃さへんでー。『ドラゴンっぽい冒険者が依頼に行ったきり帰ってこない。』なーんて話聞いたからな。一丁前にギルドカードも持っとるしあんさんがその冒険者やないかって思うたんよ。で、ホンマはどうなん?」
「そうだよ。」
「ホンマかいな。」
「もうすぐこの辺りでスタンピードが起こるかもしれない。キミも気をつけて。」
「…そんなこと、とうに知っとるわ。森の奴らはもう逃がしたから残っとるのはワイとあんさんくらいやな。」
突然、ポイズンの目が鋭くなった。それと同時に身体が動かなくなった。
【これは…【蛇睨み】か!睨みつけた相手をしばらくの間マヒさせるヘビ系の固有とくぎ!】
「ポイズン…何を…!」
「あんさんに聞きたいことがあんねん、ちょっとだけええかな?悪魔さん?」
この感じどこかで…【みやぶる】!黄色く光った、黄色は警戒の色だ。得体の知れない自分を警戒しているって感じかな?
「いいよ…何?」
「こんな状況でも落ち着いてられるとは、えらい肝が据わってんねんな。まあええわ、何が目的なん?師匠が言うてたわ、勇者という悪魔に気をつけろてな。敵か味方かは自分の目で判断してなっちゅう話や。ワイはあんさんがごっつ悪いやつには見えん、けど目的が分からへんねん。ワイはあんさん信じるからショージキに答えてくれへん か?」
自分で判断する…ってことは多分ブレスのことだ。ブレスにも弟子がいたんだ。ウソを言う理由もないし、ここは正直に言おう。
「僕はここに依頼で来た。そこで魔物に襲われて退治したけど、疲れはてて倒れてしまったんだ。」
「なーんやそういうことやったんや!なら問題ないな、疑ってすまんかったな!」
「本当に信じるの?」
「はっはっは!あんさんも疑り深いな。大丈夫や、あんさんの目はホンマのことしか言うてないって叫んどるわ!こんなまっすぐな目ぇ見たん初めてやわ!はっはっは!」
すごく豪快に笑ってるけど相変わらず黄色く光ってる。こう言うところを見るとポイズンは今まで会った中で一番人間っぽいかもしれない。
「ああっと、あんさんはワイよりも年上か?やったら謝っとかんとな。」
コマンド、僕って生まれてどのくらい経つっけ?
【1年だ。前に祝っただろう?】
「1歳だよ。」
「1歳!?んなアホな!あんさんのことはよーく耳にしたけど生まれてたったの1年かいな!こいつは驚いたわ!はっはっは!」
警戒の黄色が緑に変わった。多少は信じてくれたみたいだ。
「そんで、イロにはもー1つ聞きたいことが…」
ポイズン、もうあだ名で呼ぶの?なんて思ってたら外で爆発音が聞こえた。僕もポイズンも顔を合わせて頷いた。
「おっ始めよったみたいやな。つづきは雑魚共を凪ぎはらってからでええか。イロ、あんさんも戦えるやろ?行くで。」
「うん。」
ポイズンってどんな戦い方するんだろう?…まあ、戦えば分かるか。
つらい日が続きますが僕もバイトの合間に頑張ってます。
僕からは文章しかお届けできませんが応援します!
(そっちのことは知らねえけど頑張れよ。)
「さくせんはいのちだいじにで!」
【できることもできないことも多いが何かできることを探すのもいいかもな。】
みんな無責任…では次の記録で会いましょう。