57.初のクエスト
僕たちは朝早くから酒場の前に居座っていた。
そろそろ開く頃だけど…
「うーん…今日も頑張るか。あ、イロアスくん!朝早いね、野宿?」
「うげっ、メイさん。何で分かったの?」
「ムーンちゃんはお金とか無駄遣いに厳しそうだから。」
(よく分かったな。流石紹介人だ。そんなことはどうでもいい、今日は依頼を受けに来たんだ。複数受けるからあたいたちに見合ったクエストはねえか?)
僕たちは酒場に入ってメイさんにクエストをいくつか紹介してもらった。
今回受注したのは魔物の討伐と素材の採集だ。
どれも弱い魔物だし、そこら辺にある素材ばかりだったから多めに受けておいた。
今の僕たちならランクの高いクエストを受けてもいいと思うけど、ランクに見合ったクエストしか受けられないらしい。
冒険者を守るためらしいから仕方ないけど…
という訳で僕らは町からちょっと離れた所でクエストを消化している。
「【治し草】に【カチコチきのみ】【ちからキノコ】と…いつもアクアに教えられてたからどれがどの素材がか覚えちゃった。」
ーー
(あんたは手間がかからなくていいよな、あたいはコマンドに付き合わされてうんざりだよ。)
ーー
【そう言うな、提供する情報の向上をするためだ。お前たちのためにもなる。】
僕が素材を回収している間にムーンは空を飛んで地図を記録している。
コマンドは僕たちが歩いたり飛んだ場所を随時記録しているんだ。その情報は地図として使えて行動ができる場所を座標で分かりやすく表示したり素材の位置はキラキラポイントとして表示してくれる。
ゲームで地図を1マス1マス手で記録していた少年時代が懐かしいよ。
(相棒、一通り回ったよ。自由に飛べるからってこき使いやがって、報酬はそれなりのを用意しろよな。)
「もちろんだよ!コマンド、手伝ってね。」
【うむ、こき使われている気もするがいいだろう。】
その後も拾ったり飛んだり砕いたりしたり僕を見て逃げまとう魔物の急所を貫いて色々な素材を集めていった。
しばらくすると話すことがなくなって僕は黙々と素材の回収をしていた。
(なあ相棒、これからあたいたちの戦いはもっと激しくなる。あんた一人じゃ対応しきれなくなる。だから、疲れて交代したいときは言ってくれ。魂を休めれば魔力は回復するからな。)
仲間としての絆が深まったことでムーンと交代できるようになったみたいだ。僕とムーンで得意、不得意があるから上手に使い分けよう。
(ところで相棒、あれは助けた方がいいんじゃないかい?)
ムーンが指差した森の奥では人間たちが魔物と交戦していた。
「うん、助けに行こう!」
僕は【擬人化】を使って人間の姿になった。
(だと思った。れんけいしんかスピード!)
「そのまま加速だあっ!」
ーー
WEAK UP YOUR SPEED!
TRY YOUR FULL SPEED!
ーー
僕は限界まで加速した。風が鋭い刃みたいに身体に打ち付けてビリビリと全身の鱗が軋むけど、加速した。
周りの木が高速で通り過ぎていく。そのまま魔物を思いっきり蹴った。
「だりゃあっ!!!」
気がつくとドラゴンになっていた。走ってるときに【擬人化】が剥がれて落ちてしまったみたいだ。
ついでにスピードも解除されていた。
「わあっ!ド、ドラゴンだ!」
怖がらせちゃったか、でもなりふり構ってられない!
「く、来るなら来い!」
「おお神よ!我らを見捨てるのですか…」
(あーもーうるせえ!そこの女!さっさとそいつらのケガを治してやれ!)
あっちは慌ただしく回復をしている。ムーンは回復呪文は使わないけど大丈夫だろう。コマンド、あの敵は?
【あれは【鬼こぞう】だ。小さい割に力があって集団で行動する習性があり、群れに囲まれれば跡形も残らないという。討伐対象だ、全て蹴散らせ。】
「オッケー。ムーン、その人たちを頼む!おりゃあっ!」
「ケケケケッ!!」
ーー
鬼こぞうたちがあらわれた!
コマンド?
ーー
▽たたかう
僕は鬼こぞう共を斬って殴った倒しまくったがが、なかなか数が減らなかった。
「ケケケケッ!!」
「ケーッケッケッケ!」
「まとめて吹き飛ばすか。ブレス、君の力借りるよ【超進化】!」
僕はブレスに超進化した。変身したときに起こる風で周りにいた鬼こぞうを吹き飛ばした。
「風よ!邪悪を切り裂け【ウィンドスラッシュ】!」
「ギャアーーーッ!!!」
吹き飛ばされて宙を舞っている鬼こぞうをオリジナルの技、かまいたちをモチーフにした風で真っ二つにした。
ブレスの力はまだ使いなれてないから風にお願いする感じに詠唱する必要があるんだ。ブレスに教えてもらった技は詠唱なしでできるけど、オリジナルとなればまだまだだ。
これで全部たおしたと思ったけど…縄張りに入ったときみたいに心がざわざわしてなんだか落ち着かない。
身体を研ぎ澄ませてみる。風の音…モンスターたちの声…自分が風になったみたいだ。ブレスっていつもこんな感じだったのか…
その中で異様な音と気配がした。
「そこか【ウィンドスラッシュ】!」
「ギャアッ!」
気配に向かって風を放つと木に隠れていた鬼こぞうに当たった。
この技の一番の特徴は風には弱いけど、風さえ通れば技が通り抜けるというものだ。いわゆる切り裂く気流のようなものだ。
「ふう、こっちは片づいたよ。ムーンそっちは?」
僕はムーンたちがいた方を振り返った。