37.忍び寄る邪悪
とりあえずアイスのいる方角に進むことにした。ここの土地は全く知らないし、地図もない。ドラゴンがしばらく留まっているところは安全らしいから今受けてるクエストも兼ねている。本当に安全だったらいいんだけど…
それとムーンは擬人化して実体を出している。トルクスが暴れないようにするためだ、抜かりないね。ムーンに負担がかかってなけれいいけど…
(っ!?)
「ムーンどした?」
(アクア!【鉄壁呪文】を使え!今すぐに!)
ムーンが動揺するほどヤバいのか!自分はトルクたちを守るように構えた。
「【鉄壁呪文】【カケ】【鉄壁呪文】ええいっ!【特硬鉄壁呪文】っ!ムーン、何が起こるの?」
アクアが杖を地面に突き立てると重なった魔方陣があらわれて、自分たちを覆うようにドーム状の結界を展開した。
【鉄壁呪文】ってことはアクアが覚えてる【防壁呪文】の上位の呪文だろう。
「分かんねえけど、【勇者の相棒】で何か見えた!とてつもない何かが来る!」
とてつもない何か…!遠くに何かの影が見えるけどあれのことかな?
「魔力が集束してる…いえ、周りから吸い取ってるわ!」
遠くの影からなんかヤバそうな黒い影が大きくなってる!
来るとムーンが言った次の瞬間に黒いエネルギーが放たれた。一瞬で結界に当たってその衝撃に吹き飛ばされそうになったが踏ん張った。
「くううう…最大出力なのにいいい破られそうううう…」
ムーンとブレスがアクアに魔力を送ってるけど、それでも耐えられず結界にヒビが入ってきてる。破られるのは時間の問題か…だったら!
「ムーン!あの子たちを頼む!」
自分は【火炎のブレス】を構えた。
(ちいっそういうことか!ブレス、アクアは任せた!あんたたち歯あくいしばりな!)
自分は最大のブレスを吐いた。そのせいで結界が割れて大爆発が起こった。
「いててて、ひどい目にあった。なんとか相殺できたけど一体誰があんなことを…」
みんなは近くにいないな、吹き飛ばされてバラバラになったか。人間たちにはムーンが付いてるし、アクアとブレスも近くにいたから大丈夫だろう。
「とにかくみんなと合流しないと。」
少し動こうとしたら、急に身体が身を隠した。わわっ!急に何だ!?
【言葉を発するな、敵は近くにいる。狙いはお前の様だ、周囲に気を配りながらこの場から離れるぞ。】
う…うん、分かった。コマンドって結構支配力強い…
コマンドに言われた通りに道を進んで開けた場所に出た。振り切った?
【いや、何かがおかしい。森の中を通っていたはずだ。一体何が…っ!飛べ!】
もうさすがに慣れた。コマンドに言われてすぐに空高く飛んだ。すると元いた場所が黒い影でおおわれていた。
【すまない、あまりに魔力の揺らぎが少なかったから見逃していた。あの様な芸当ができるのは人間かあるいは…】
終族…!
[我が名はゲキデーモンのヨクト!貴様、勇者をこの世から終わらせに来た!逃げても無駄だ、我は貴様の勇気をどこからでも探ることができる!]
空からいかにも悪魔っぽい奴が来た。
なるほど、これは厄介だ。この勇気のせいで逃げられないなんて皮肉にもほどがある。こいつは強い、自分とコマンドだけじゃ確実に勝てない。
ムーンたちと合流できるのを待つか?無理だ、耐えられる自信はない。戦うか?ダメだ、確実に勝てない。
…いや、こいつを野放しにしていればこの世界の勇者たちが…!
「【コマンド?】援護してくれる?」
【もちろんだ、我はお前の選択を確実のものにするまで。例えお前が世界を破壊しようとも全てが終わるその時まで付き合ってやる。】
うん、色々と物騒だけど頼もしいよ。
【たたかう、さくせん、しらべる、にげる、お前の選択はどれだ?】
ハナから一つしかないでしょ!
▽にげる
「七転八倒逃げるが勝ち!」
走れえええ!!!逃げても牽制はしてやる!
「【雷呪文】!【雷呪文】!【大地呪文】!」
呪文を打てば足止め程度にはなるはず。というか走りながら呪文使ってても全然減速しない。スキル【同時進行】のおかげかな?
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【同時進行】(便利)
二つの物事を同時にこなしたものが覚えるスキル。
思考を分割して二つの物事を普段通りの速さで行える。
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これなら走りながらでも敵を狙えるな。それにしても、あのヨクトって奴、なかなか攻撃をしてこないな。今までの行動パターンからして高威力の技を打って一撃で仕留めようとしているんだろう。
【終族は自尊心の塊。綻びを狙うことができれば倒すことができるかもしれない。狙い目は技を打った直後だろうが、終族は魔力の扱いに長けている。フルチャージまでは数秒もかからないだろう。っ!右だ!】
言われて右に避けると左に黒い影が走った。ヤベーイ!間一髪!
【伏せろ!】
伏せると真上を黒い影が真上を通過してそのまま森の木を切り裂いた。
「ちくしょう!やっぱり頼りっきりだー!」
【いや、我はお前のサポートをしているまで。我も我なりに戦っているのだ。気にせず走れ、たたかうんだろう。】
そっか、じゃあ気にせずじゃんじゃん頼るよ。
【コマンド?】
▽しらべる
「検索ワードは『終族』『黒い影』『ゲキデーモン』だ。」
【ふむ、情報は少ないが分かったぞ。あのとくぎ【シャドウバスター】の弱点は接近戦だ。】
「了解!」
僕は木の影に隠れてヨクトの行動を待つ。
【飛び上がれ!】
奴の攻撃が上から放たれた。飛び上がってスレスレで影をよけてヨクトに自分の爪を当てた。そのまま地面に叩きつけた。
【【シャドウバスター】は遠ければ大きく威力が高いが打った根元が小さくて威力が弱い。他の手を隠しているかもしれない。気をつけろ。】
自分はヨクトから距離を取って地面に降りた。ヨクトはよろめきながらも立ってこちらを見た。
[バカな!なぜ我の攻撃が当たらない!?」
どうやら僕は想像以上の強さだったらしい。
「僕だって、頑張ってるからね!この厳しい世界を生き抜くために!」
[認めない…認めないぞおおお!!!我より強い者はこの世界には存在しないんだあああ!!!]
地面を叩きつけて赤い宝石を取り出すとそれを砕いて身体に取り込んだ。
「相棒!大丈夫か!?アクア!こいつらを連れて逃げろ!」
ムーンは僕の中に入った。
「ムーン!よかった、助かったよ。」
(ギガデーモン相手によく耐えたね。こっからはあたいたちのステージだ!)