23.仲間として…
またムーンに迷惑かけちゃったなー。
もっと頑張らないとって頑張ったら迷惑かけたし、頑張らなかったらこの先迷惑かけちゃうし、どうすれば良いんだろう…
【良い加減にすれば良いと思う。まずは基本を教えてもらえば更に強くなれる。】
うーん、ムーンとアクアに教えてもらうのは…ちょっと…
【なぜだ?その方が確実で、目標へも早く到達できるはずだ。】
女の子二人に強さを教えてもらうのは…自分のプライドが許さないというか…
【強くなるのなら手段を選ばないのが得策だ。ただ、信念を忘れてはならない。】
仕方ないっちゃ仕方ないか。
(強さくらい教えるよ?呪文も格闘も暗殺も何だって教えられるからよ。)
「最後のは余計な気がするけど、頼もしいよ。」
今は頼もしい仲間がいる。頼れるときは頼っても良いよね。
拠点に着く頃には体力も全快していた。
ムーンから降りて一匹で歩いてるときに少し悲しくなった。
ムーンの身体からは温かさを感じなかった。
やっぱりゴーストだからかな?
(あー、やっぱ話した方が良いのかねえ…この際だし、話してやるよ。アクアが仲間になったらな。)
もともとそのつもりだから!行くよ!
拠点に向かって全力で走った。
(あっ!待てよ!そこで走ったら…)
【トラップ反応だ!止まれ!】
「えっ!?えっ!?待って何それ?うわっ!」
急に言われて止まろうとしたけど、つんのめって前に飛んでしまった。
地面が光ったと思うと糸が絡み付いて身動きが取れなくなってしまった。
(あちゃー…わりいな。変な奴らが近づいたら捕まえられるように【捕縛呪文】をいたる所に仕掛けてたんだ。あたいが近づいたときには発動しないようにしてんだけどよ…解除っと。)
糸が消えて動けるようになった。
仲間が近づいたときは発動しないようにしてよ…
(じゅもんは設定を加えると消費が激しいんだよ…善処はするけど、文句は言うなよ。)
じゅもん…か…
【お前の前世ではじゅもんは存在しない架空のものらしいな。扱うのも難しくはない。コマンドの我がサポートしてやろう。】
助かるよ。自分だと、唱えたときにムラがあるように思うんだ。気のせいかもしれないけど。
【うむ、さっきの合体とくぎも45%のMPが無駄に消費されている。】
そんなに!?
無駄に消費MPが多いと思ったけど、そんなに多かったんだ。
【効率の良い魔力の使い方を教えてもらうのは今後の旅に役立つ。】
確かにそれが一番だね。一匹で練習するのも限界があるし、ここも教えてもらおう。
ムーンにこの世界の情報を教えてもらいながら歩いているといつの間にか拠点に着いていた。
「勇者様、ムーン、おはよう…」
アクアが目を擦りながら起きた。
ムーンと自分はこのとき全く同じことを考えた。
「のんきだなあ。」
あまりにもいつも通りだったので思わずため息が出た。
その後朝食を済ませた自分は話を切り出した。
「よし!それじゃあアクア!ずいぶん待たせたけど自分たちの仲間になってくれる?嫌なら断っても…」
「もちろん良いわよ!これからよろしく!勇者様!」
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アクアが仲間に加わった!
アクアは新しいスキルを覚えた!
特殊スキル【勇者の導く者】を覚えた!
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前置きはこのくらいにして本題に入ろう。
「よし!アクアも仲間になったところで二人に相談があるんだ…自分たちはお互いに秘密が多すぎる。秘密だらけの仲間じゃ信用を無くしてしまうし、急に問題に巻き込まれたときに対処できないかもしれない。だからここでお互いの秘密を打ち明けよう。これ以降仲間同士で秘密を作るのは無しだからね!じゃあ自分から言うね。」
自分は元々人間だったこと。こことは全く別の次元から来たこと。全てを余すことなく打ち明けた。
(へえ、人間か。人間って言ったら嫌な思い出しかねえなー。あんたはそんな奴らとは違うみたいだし良いけどよ、それは他の奴らには言わない方が身のためだとあたいは思うよ。)
確かに人間嫌いしてるドラゴンもいないとは限らない。あちこちに言いふらして不信感を抱かせるより賢明だろう。
「私は勇者様が何者だろうと構わないわ。」
うん、知ってた。
じゃあ次ムーンよろしく。
(あいよ、じゃあどこから話そうか…まあ、簡潔にするか。あたいは200年くらい前につくられた魔王の配下でドラゴン専門の暗殺者だ。それと怪盗…と言うより泥棒な。身体がないゴーストだよ。殺したヤツとか目の前で死んだヤツの顔も忘れない。まあ、そこら辺の賊よりも圧倒的にマシって思う。)
なんか、自己評価高くない?
(うるせえ、あたいが今まで会った中じゃあ良いヤツの分類なんだ。)
ムーンの独特な価値観はここから来てたんだ。
「そっか。それじゃあ最後はアクアだね。」
ついに一番秘密が多いアクアに順番が回って来た。