15.気分屋
投稿忘れてました
「あー…少しは落ち着いたかしら?」
「(はい。)」
顔が壁にめり込んだ。それもムーンと。なぜムーンに打撃が当たったのか分からないけど、ギャグだからできたということにしよう。
「さてと、外へ行くわよ。日が暮れる前に砂丘を抜けましょう。」
「(砂丘?)」
外へ出ると砂地が広がっていた。遠くを見ると草原や茂み、高い山々、天を貫くような岩山、とにかく自然に溢れた世界だった。
「すごい…世界ってこんなに広いんだ!」
思わず見渡してしまった。ビル軍か山しか見たことがない自分にとってこんな大草原を直接目にすることがなかったからものすごく感動した。
「フフフフッ勇者様、すごく子どもっぽいわよ。」
ぬおおおお!恥ずかしいいいい!
(ったく…さっさと進むぞ。)
ムーンにもため息吐かれた…
「にしても何で溶岩なんて流れて来たんだ?」
ふとした疑問を打ち明けた。
「あの洞窟はマグマだまりと繋がってていつ流れてきてもおかしく無かったの。」
(じゃあ、なんであんたはそんな洞窟に居たんだ?さっさと出ればいいのに。)
ムーンが自分が聞きたかったことを代弁してくれた。危ないのなら早く出ればいいのに。何か用事でもあったのかな?
「あっ…えっと…それはね!えっと…」
アクア、誤魔化そうとしてる?その瞬間、アクアが赤く光ったように見えた。ムーンを【みやぶる】したときと同じだ。これは【ラーの瞳】か…
(訳ありみてえだな。言いたくなけりゃ別に言わなくていいけど…)
多分自分の【のりうつる】を通して見たんだろう。この態度はムーンらしくないけど、気を使ったんだな。
「うん、また話す機会があれば話すわ。」
アクアがまた寂しそうな顔してる。
自分とムーンはこの真実を知ることで自分が冒険する訳を知ることになる。
と言っておけば次のストーリー展開が面白くなりそうなのでとりあえず言ってみた自分だ。
(なに終わらそうとしてんだばーか。)
伏線張ってもいいじゃん!
(そういう先のネタバレはするなっつーの!)
痛い!殴るのはひどいよ!
(知るか、それは作者の仕事だろ。)
しないと思うけど…という謎の会話をしながら足を進める。
「やっぱり二匹は仲がいいわね。」
満面の笑顔で言われた。
「(良くない!)」
また被った。どうしてこんなに合うんだろうか…相棒だからということにしよう。
「あとさ、誰かの声が聞こえたような気がしたんだけど、気のせいかな?」
すっごい中二病的なこと言ってたし、人影みたいなのも見えたし確定だとは思うんだけど…
(いや、あたいには聞こえなかったよ?気のせいじゃねえか?)
あれ?
「私もそう言うのは感じなかったわ。誰かが洞窟の魔力を動かしたみたいだけど…それ以上は分からないわ。」
二匹には聞こえなかったのか…じゃああれは何だったんだろう?
そんな話をしているといつの間にか夜になっていた。砂丘を抜けた自分たちは森の深いところにある洞穴でキャンプを開くことになった。
(食料はあとどれくらい残ってるんだい?)
焚き火を囲んで座っている自分たちにムーンが聞いてきた。別にムーンは食べなくてもいいから食料の心配はいらないと思うけど…
(気分の問題だ。腹減って戦えないとかカッコ悪いからよ。)
いつも思うけど、心読んで喋らないでほしいな。アクアが置いてけぼりになっちゃうし。
(変なこと考えてねえか監視してんだよ。早くさっきの質問に答えろ。)
自分ってそんなに信用ないかなあ。出会って間もないからってのもあると思うけど。自分の隣に置いた【ぬののふくろ】に手を伸ばしたがそこになかった。慌てて周りを見回すとアクアがふくろを探っていた。先に確認してくれてたみたい。
「約三日分ね。でもあんまり日持ちしないかも?保存が効く食料があれば…」
確かに【干した肉】とはいえど、あまり日持ちはしないだろう。持ってせいぜい四日。それ以降は衛生上で危険だ。
「ドラゴンなら衛生なんて気にしなくていいんじゃないのか?」
自分が想像するドラゴンは何でもかんでも食べてしまう超雑食でどんなに腐ってても食うものだと思っていた。
「うーん…食べるには大丈夫だけど、やっぱり気分かしら?」
ドラゴンってやっぱり気分屋だなあ。自分が色々想像した一つのドラゴンにそっくりだ。
「じゃあさ、ここを拠点にして食料調達しよう!自分は肉なら二週間保存できる方法を知ってる。」
人間の技術いつか役に立つと思ってたけれど、こんなところでとはなあ。
食べ物を燻製することで保存性を高めるらしい。やり方は単純に言えば煙で燻す。下準備に塩漬けしたいけど、塩がない現状じゃ不可能だ。だから代わりに干せばいい。もちろんこれは何でも知ってるあのサイトで調べた情報。コマンドで自分の記憶から抜き出した情報だけどね。
(まあ、それが得策だな。そんなに日持ちするなら蓄えもいくらか出来るし。じゃあ、二匹共、行ってこい。)
あれ?じゃあムーンは何するの?
(実はな……………しばらくあんたと離れることにした。)
え?