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魔獣との戦い

 クウとカンナはある程度魔獣との距離を空ける。彼女たちの役割は後方支援であるためだ。

 残りの三人は魔獣の間近まで接近し、それぞれが行動に移って行く。


 レツは《ステルス》を使って魔獣の目の前から姿を消す、

 魔獣は姿を消したレツに気を取られるが、そこにルークが剣を叩き込む。


「おらぁああああ!! ってかてぇな!!」


 しかし全然効いた様子はない。敵意がルークに向いただけだ。

 魔獣は特徴的な尻尾をルークに振り下ろそうとする。その間にルドガーは割り込んだ。


「《ファントム・シールド》!」


 ルドガーの盾に黒いもやがかかると思うと、元々の大きさの倍以上となり、それによってルークの身を守るが……。


「ぐわっ!?」


 盾によって直撃は免れたものの、ルドガーを盾ごと飛ばす威力があった。

 それからすぐに魔獣はルークに向けて尻尾を振るおうとする。


「《ムゲン・バレット》!」


 そこにカンナによって無数の魔法弾を放たれる。

 【開闢】の登場によって開発の進んだ魔銃は、圧倒的な連射が可能となっていたのだ。

 尤も、準備に時間がかかるため、模擬戦ではクウに瞬殺されたが。


 その魔法弾はというと一発一発の威力は低いが、無数の魔法弾によって作られた弾幕に、魔獣の気は引かれる。

 ルドガーを守るためでもあったが、魔獣に大きな隙を作ることに成功していた。

 その隙をつくべく、レツが魔獣の背後に姿を見せた。


「《ウィンドカッター》!!」


 そして、風の刃で相手を切り裂く魔法を付与した短剣を、魔獣の背中に叩き込んだ。

 この隙を利用したのはレツだけではない。


「《ボムブースト》からの《フレイムソード》!」


「《メテオ・シャワー》!」


 ルークは加速の勢いも乗せた炎属性を纏わせた剣を前面から叩き込み、クウは空中から光の球を降り注がせる。

 流石にこれなら倒せただろうと全員が思った。しかし。


「グぉぉオオおお!!」


 魔獣は怒号を上げて一回転。

 そのことによって近くにいたレツとルークが弾き飛ばされた。


「ぐわぁあああ!!」

「がはっ!?」


 尻尾の先端部分ではなかったため、二人とも致命傷は免れた。

 しかし、地面に叩きつけられてしばらく動けそうな様子ではない。

 魔獣はトドメを刺すべく倒れたレツに近づいて行く。

 このままではレツが危ない。


「装弾――《ストロング・バレット》!」


「《ホーリーピラー》!」


 そう判断し、クウとカンナは遠距離から即座に放てる最大威力の攻撃を放つ。

 カンナは今度は魔力だけでなく銃弾も詰め、発砲。

 クウの攻撃は、魔獣の頭上からレーザーのような魔法を叩き込むものだ。それはまるで光の柱のようであった。


 だが魔獣は二人の攻撃を意に介した様子もなく、レツを踏みつけようとしていた。

 これまでの攻撃から、相手にする必要がないと判断したのだ。また、それは事実であった。

 銃弾は身体に当たったと思えば弾かれ、光の柱は全く効いてる素振りを見せない。


 そうなると守れるのは盾だけだ。


「させるかよ!! 《コットン・シールド》!!」


 レツの前にルドガーが盾を綿状に変化させながら割り込んだ。

 綿は意外にも弾力があるようで、魔獣の足を弾く。

 それによって一先ずは命拾い。起き上がれるようになるだけの時間が稼げた。


「ありがとうルドガー」


「いいってことよ。だが……」


 このままでは打つ手がないことには変わらない。

 こうしている今も、特徴的な尻尾を叩きつけてこようとしていた。


「仕方ねぇ! 《キャッスルシールド》!」


 とりあえずその一撃を防ぐ。ルドガー最強の防御技である。

 ただしこの技には弱点がある。圧倒的防御力を手にする代わりに動けなくなるのだ。


「この技ならお前を守れるだろう。ただ、動くことはできない。俺の陰に潜みながら何か作戦を考えろ!」


 そこに、後方支援に徹していたカンナから連絡が入る。

 後衛と前衛で何かしら連絡手段を持つのは基本である。そのためにレツたちは念話を習得していた。


『やってみたいことがあるの! そのまま時間稼いで! お願い!』


「……カンナか! 一応準備は進めておいてくれ。でも恐らくそれだけの時間を稼ぐことは難しいぞ。恐らく狙いを変えてくる」


『難しそうなのかぁ……でも分かった。進めとくね』


 落胆するカンナに、時間さえ稼ぎならとレツが提案した。


「暴風陣を使ってみたい」


「……!? でもあれは!!」


 反応したのはルドガーだった。

 あの魔法のデメリットはよく知っている。

 設置も必要なうえ、体力の消費も激しい。


「なら他に何かできることはあるのか!?」


 躊躇するルドガーに、レツは思わず語気が強くなってしまう。

 その後申し訳なさそうにするレツに、ルドガーが言う。


「気にするな。それが正論だ。だがこのままでは俺達に打つ手は残っていないのもまた事実だ。と言うかそもそも俺は反対すらしていないからな。やるならさっさとやってくれ」


「……恩に着る。ルドガー。それじゃあやるぞ」


 そう言ってルドガーの背後から離れたレツは、両手に風の魔力を固めて作った刃が握られていた。


「まずはこうだ!」


 その魔力の刃は、魔獣の横を通り過ぎていく。

 魔獣は一瞬それに気をとられるが、視線をすぐにレツに戻そうとするが、その一瞬の間にレツは《ステルス》で姿を消していた。


「ぐぉぉぉおおおおおお!!」


 狙っている相手の姿が見えなくなった魔獣が次にとった行動。

 大声で威嚇し、ルドガーの周囲を連続して尻尾を叩きつける。

 これはレツに効果抜群であり、ルドガーの背後に戻らざるをえなかった。


「これじゃあもう二か所が設置できない……」


 最初に投げた刃はその意図に気が付いたルークが設置してくれたから問題ないが、こちら側の設置に関してはルドガーより内側に設置する必要がある。でなければ巻き込んでしまうからだ。

 しかし、内側は尻尾による攻撃の範囲内。

 レツの悩みに気が付いたルドガーが言う。


「俺を巻き込め」


「だが……」


 ルドガーは決意した様子だった。仲間のために。

 暴風に煽られては《キャッスルシールド》も持続できず、カンナが準備している何かに巻き込まれるのは明白だ。

 そんなことを許すわけがない。レツはもちろんみんなもだ。

 そこに助け船が入る。


『話は聞かせてもらったよ。暴風陣が発動したら転送魔法でこちらに転送するから、レツやっちゃって』


 クウからだった。

 この時、ルドガーの首元に紋章のようなものが現れていてそれが輝いていた。転送魔法の準備ができている証だろう。


「恩に着るクウ」


 レツはクウにそう伝えるとルドガーの背後から飛び出した。

 そして安全圏まで一気に駆け抜け、風の刃をセッティング。準備完了だ。

 準備が終わったところで、レツが姿を見せた。

 それを合図にクウは転送魔法を発動する。


「転送――対象者、ルドガー……やっちゃって!」


 ルドガーは光に包まれた次の瞬間には、クウの横に場所を移していた。


「これが転送か……何とも不思議な感覚だ」


 呑気に感想を述べるルドガーに対し、目の前からルドガーが消えた上に離れた位置に狙っていたレツが現れた魔獣は怒り狂っている様子だった。


「ぐおおおおおおおおおお!!」


 すぐにでもレツを倒すべく駆け寄ってくる。

 だが、もう遅い。


「《風結界・暴風陣》発動!!」

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