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パーティー

 レツの言葉に、そうなのですかと全員の視線がカマルに向いた。

 一斉に視線を向けられたカマルは、気恥ずかしそうに答える。


「ま、まあその通りだ。ギルマス権限によって君たちのステータスをこっそり話を聞いていた。だから誰を合格にするのかもリスト化していたし、見込みの無さそうな奴は門前払いにしていたのさ」


 それを聞いていてやはりなとレツは思う。

 一戦目に二戦目と、新人としては明らかに強い二人を連戦で相手すれば、何となく分かってくるものである。

 だから、不合格にされることはないと判断。また、本気を見たがっているであろう人達が多いことから、レツは二回戦で出し尽くすことにしたのだ。


 一方で他の新人冒険者たちは疑問を感じていた。

 ルークが挙手して質問する。


「それならなぜテストを?」


 そもそも合格が確定しているならば、わざわざテストをする必要性が感じられない。そう思ったのだろう。

 しかし、すぐに聞かなければよかったと後悔することになる。


「いい質問だねルークくん! 簡単な話だよ。君たちの実戦能力を見たかったんだよ。実際、君はステータスだけ見た強さならレツくんと同等かそれ以上と言っていい。だが、結果はあっさり決まった。この意味が分かるか?」


 考えてみれば当たり前のことだ。

 実際に外に出たらこれまでとは勝手が違う。どの程度の対応力があるのか、ギルドとしては把握しておく必要がある。

 何も言えないルークは一歩下がった。


 それを気にしない様子で、カマルは続ける。


「……これについても説明する必要があるな。レツくんと戦わせることにしたのは、まあ実戦経験の有無かな。実はレツくんのことは以前からお世話していたからね、実戦能力は充分と判断していたのさ。だから、実戦経験のある子に他の子の相手をしてもらいたくてね」


 事情は大概理解した。ただ、それなら一つ問題が残る。

 レツが出し切ってしまった為、残り二人の実戦経験が見れないまま終わってしまうのは、どうするつもりなのだろうか。

 心配してそれを聞いた二人にカマルはそれなら問題ないと笑顔で答えた。


「クウちゃんに代わりに相手してもらうよ」


 それにしてもとカマルは思う。


(正直ここまで強いとは思っていなかった。実戦経験者として扱ってもいいだろう。初見殺しに敗れただけで、単純な戦力なら新人最強だ。狩りを行なってきたレツはともかくとして、彼女はどこで力を身に着けて来たのだろうか?)


 考えていても仕方がない。

 残りの模擬戦を進めていくことにした。



 残りの模擬戦はクウの圧勝だった。

 盾の少年ルドガーは、連続して放たれる魔法を受け流しきれず敗北。

 魔銃の少女カンナは、高速で放たれる魔法の前に手も足も出ず敗北。

 この結果にカマルは苦笑いしながら頬をかいていた。


(そして想像以上に容赦なかった!! まあ負けてしまった二人には、クウの魔法対策を目標に最初教育していくかな)


 ともあれ、これで入団テストという名の能力調査は終わりである。

 そのまま訓練場でギルドメンバーが見守る中、カマルは入団式を執り行う。

 レツも立っていられる程度には回復済みだ。


「さっき説明した通り、君達は最初から入団は最初から認めていたわけだが、まあ形式上テストに合格と言わせてもらおう。そういうわけだ、君達の入団を認める!!」


 途中途中適当だったが、最後のキメるところはキメるカマル。

 やっぱりギルドマスターなんだなと再認識したところで、新人たちは一斉に頭を下げた。


「「「「「ありがとうございます!!」」」」」


 そしてパチパチパチと、拍手の音が訓練場を包んだ。


 拍手が鳴りやんだところで入団式が終わりらしいのか、ギルドメンバー達が騒々しくなる。

 パーティーへの勧誘合戦が始まろうとしていた。

 そこにカマルは言う。


「お前達、何か勘違いしていないか?」


「えっと一体何を?」


 当然困惑するギルドメンバー達。

 やれやれと困った子を見るようにカマルが説明した。


「今回は新人の育成方法変えるって言っただろーが!!」


 これだけでは育成方法を変えろと言うだけだ。勧誘への問題が見当たらない。

 そのためギルドメンバーは一斉にツッコんだ。


「「「それだけで分かるかー!!!」」」


「ああん!? 私らはトップスリー脱却を目指してんのを忘れたのか!? 毎回毎回トップスリーってドヤ顔で言うのはいいけど、やっぱり恥ずかしいから一位がいいよなって話になったよな!? その鍵を握っているのが新人だ! 自ら考える力を身に着けさせるために、新人たちでパーティー組ませると私は決めていたんだよ!!」


「「「後半初耳だよ!!!」」」


 ヒートアップしていくギルドメンバーとカマルたち。

 心配そうに見守る新人四人に、以前から彼らを知っていたレツは言う。


「いつもの光景だから安心していいよ」


「「「「はぁ……」」」」


 呆れたような溜息しか出なかった。



 ギルドメンバーが諦めてトボトボ訓練場を後にしたところで、カマルは新人たちのところに戻った。


「いやぁー、見苦しいところを見せたね」


 本当に見苦しいよと新人たちは思うが、口には出さない。

 最終的に力での衝突となって、一人蹂躙するカマルを見たからである。

 そんなこと知る由もないカマルは続ける。


「さて、それじゃあ説明に移って行こうか。今話したのを聞いてて分かったとは思うけど、君たちでパーティーを組んでもらうよ。そこで質問だ、パーティーを組む意義は何だ?」


 その問いにまずルークが答えた。


「安全性を高めるため」


「まあそれもあるが私が言いたいのは違うな……次!」


 次にカンナが答えた。


「協力して100%以上の力を生み出すため?」


「それも正解の一つだけどやっぱり違う!」


 続いてクウが答えた。


「自分で考える力を身に着けるため?」


「それは新人同士で組ませる理由だよ!!」


 その後にルドガーが答えた。


「お互いに高めあうとか……? まあ違うか」


「その通りだよルドガーくん! 近い位置で一緒に戦えば、他のみんなの強さを感じられる。それが強くなりたいという想いに繋がって行く! 君達には高みを目指してもらいたいんだ!」


 正解が出たところでカマルは話を戻した。


「これでパーティーを組む意義は理解してもらえたと思う。そこで明日から早速なんだが、君たちにある依頼を受けてもらおうと思う。詳細は明日話そう。時間についてはそうだな……二度目の鐘が鳴る頃で! それじゃあ今日のところは解散だ!」

すごく今更ですが《》を使っていることによってルビになっているところが、ちょくちょくあるかもしれません。

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