予選
あれから五日後、大会の開催のために予選が行われることとなっていた。何でも、迷宮帰還組は火属性の力を手に入れたことによって自信をつけ、そのほとんどが参加を表明したのだ。そのため、百人という想定以上の人数が集まってしまい、予選を開催することになったのである。
その予選を行われる会場で、レツたち学生は整列し、ルールの説明を受けていた。ここにいるのは予選参加者とそれを見守る教師だけである。また、説明が終わってからはすぐ予選に移るために、学生たちは全員すでに戦闘用の服に着替えてあった。
そして予選のルールを説明するのは、屈しないという意思の表明からか、学長自身だ。
「予選のルールは簡単じゃ。戦闘時間内に倒した人数上位16名が本選に参加できるようになっている。当然ながら必要以上に攻撃をした者は失格じゃ。もちろん戦闘不能になった者も失格じゃよ。それらの判断はわしの魔法で行うぞ。ちなみに予選の様子は学内に配信されていたりするぞ」
説明を聞きながらレツは予選会場の様子を見ていた。砂浜に未開の森、人の手はあまり加えられていないように見える。一言で表すなら無人島である。そういえばいつかの魔術師も島をよこせと口にしていた気がする。
屈しないというアピールに島、間違いなく敵が要求する島だろう。この状況に配信することを考えると、学長の考えが浮かんでくる。
(最早やれるものならやってみろという挑発だな……)
それをきっかけに敵が攻撃してくるのではと少し不安に思うレツだが、その雑念を振り払い、思考を大会に向けて切り替えていく。実のところ、大会後に結論を出すという約束で、レツはここに来ていたのである。そのため、大会で学校生活が最後になるかもしれない。だから、最後になったとしても悔いが残らないように、予選から全力で楽しむことにしたためだ。説明を聞くことに改めて集中する。
「さて、あとは予選をどのように進めていくかについてじゃが、最初に移動時間を設ける。それに合わせてみんな自由に移動してもらうぞ。大自然の中相手を探して戦うのじゃ! もしくはあえて目立って迎え撃つのもいいのう。それを判断するのは冒険者自信となる。それに、冒険者たる者大自然でも活動できるようになってもらわんとな。みんなの判断に任せるぞ! 最後に時間についてじゃが、花火を打ち上げて直接声を届けるぞ。だから安心して集中してほしい」
説明はこれで終わりのようだ。予選参加者の全員が数秒、淡く輝いた。
「さて、全員にわしの魔法をかけたぞ。この魔法が様々なことを判断してくれる。さて、魔法をかけたところで予選の移動時間、開始じゃ!!」
それから学長は片手を天に伸ばすと、花火を打ち上げた。突風のように迎えた始まりに、対応して森に飛び込んでいくもの、狼狽する者それぞれだ。レツはと言えば即座に森に飛び込んでいた。
レツはすでに冒険者であることからか、判断が早かった。自分のスタイルと環境に合わせた作戦もすでに立ててあったことも、判断を助けただろう。
(まずは隠れて確実に敵を倒していく)
これがレツの取った作戦だ。レツはもともと暗殺に向いたような魔法に加え、レツのような戦闘スタイルを極めた先にいるような師匠にある程度叩きこまれた技術がある。確実に敵を倒すのが一番なのは間違いないだろう。
そして茂みに隠れてしばらくしたところで花火が打ちあがり、脳内に声が響いてきた。
『それでは戦闘開始じゃ!!』
(なるほど、戦闘内容を判断する魔法をマーキング代わりに念話か。冒険者学校の学長とあってすごい技術だ)
学長の技術に感心するが、今はとにかく潜む時だ。声は出さない。やってきた獲物を確実に狩り取るために。
……そのつもりだった。
「よう、来てやったぜ?」
雷光と共に周りの木々が薙ぎ倒される。倒れる木々と雷による攻撃、レツはどちらも回避するが、隠れるところはもうない。作戦が台無しである。隠れる意味がないと判断したレツは切り開かれた場所に姿を現し、開始早々やってきた相手、ヴェルを睨み付けた。
「まさかいきなりやってくるなんて思わなかったよ」
「どうしてもお前に挨拶したくてなぁ」
言い終えると、それと同時に電撃を放つ。
物騒な挨拶があるな! とレツは内心叫びながらもそれらを回避し、《空弾》をいくつも撃ち込んでいくが、ヴェルもレツ同様回避。それから楽しげに言う。いや、本心から楽しんでいるようだ。
「やっぱりお前は楽しませてくれる!!」
この状況、レツにとっても楽しくないと言えば嘘になる。それでも作戦が台無しになった文句の一つは言ってやる。
「状況が状況じゃなければ僕ももっと楽しめたんだけどね!!」
言いながらレツは木製の短剣を引き抜き、風魔法で急加速。安全面の配慮から木製とはなるが武器の使用は認められていた。この速さに加えてリーチも伸びた武器の一撃を回避する余裕はないだろう。
「もらった!!」
「受け止めるだけだっつーの! 《雷装――ガントレット》」
ヴェルの左腕のひじから先が発光、そしてその部分を覆うように金に似たような色の籠手が現れていた。そしてそれで短剣の一撃を受け止めていた。
「っ!!」
驚いている暇はない。片手を空けているということは、隙ができたということだ。
「《サンダー・ショット》!!」
ヴェルの右手のひらから放たれる雷の一撃、即座に攻撃が来ることを分かっていたレツは、自身にあえて風をぶつけることによって無理矢理移動。雷の餌食になることはなかった。
しかしそれは現段階での話、追撃も回避していかなければならない。
無理矢理での移動で地面を転がるレツに向けて、ヴェルは両手を向ける。そしてその両手の先から次々と雷の矢を打ち込む。
「《サンダーアロー》! 《サンダーアロー》! 《サンダーアロー》!!」
レツは状態を起こしながら転がることで、追撃の餌食になることなく体勢を直した。伊達に冒険者資格を取得したわけじゃないのだ。
「ちっ、やっぱり想像以上だぜ!!」
思い通りいかないことに舌打ちしつつも、やはりヴェルは楽しそうだ。
再び短剣片手に向かってくるレツの攻撃を受け止めるべく、再び籠手を装備する。
「《雷装――ダブルガントレット》」
しかし今度は両手だ。今度はレツが攻撃にあまり力を入れてこないことを読んでのことだ。力を載せたことによる行動の遅れで生じたさっきのような隙は、もう作らないだろう。
それから籠手と短剣がぶつかり合うが、やはりあまり力が載せられていないものだ。そのため、今度のレツはすぐに次の一撃を叩きこもうとする。だがそれに対応するための両手の籠手だ。
ヴェルは籠手で守っては殴ろうとする。
レツは短剣を叩きこもうと攻撃して、受け止められたところで振るわれる拳を回避する。
このやり取りがしばらく続いた。膠着状態となったからか、二人は同時に後ろに跳んで距離を取り、それから互いに手のひらを向けた。
「《サンダースピア》!!」
「《超空弾》!!」
同時に放たれた二つの魔法。それらはぶつかり合うことなく突き進む。両者が魔法の餌食になることもなかった。
それらの魔法は互いの横を突き抜け、二人の不意を狙って木の影にいた学生に、代わりに命中したのだった。
「がっ!?」
「ぐひゃ!?」
それから二人は自身の魔法が当たった相手に向かっていく。邪魔をしようとした罪を、敗北をもってして償ってもらうべく。
「おいおい邪魔すんじゃねぇぞ」
「流石にこれは僕も受け入れられないね」
皆様、あけましておめでとうございます!
初詣や初売りには行かれましたか?私は滅多に会えない遠方の友人が近場に来ていたので、一緒にあちこち行ったりしてました。
以上、どうでもいい報告でした!
こんな私ですが、今年もよろしくお願いします!




