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討伐が終わり

 魔族討伐は無事終了して五日が経ち、街は落ち着きを取り戻しつつあった。

 その中で、一つだけ騒がしさを増しているギルドがあった。【月夜の騎士】である。


「あーん!! もうどうしてー!!」


 真昼間からジョッキを片手に泣いているギルドマスターの姿がそこに。最早完全にただの酔っ払いである。メンバー達もあれが自分達のリーダーかとドン引きしている。


「どうしたんだアレ……?」


 依頼から帰ってきたばかりで事情を知らないギルドメンバーが、カマルに聞こえないように思わずそう呟くと、近くにいた他のギルドメンバーが説明をした。


「新人が二人ここを去っちまうんだよ。あ、もちろんやめるわけじゃないぞ。高ランク冒険者にスカウトされて修行と言ったところか。それで新人の育成計画が破綻してああなってるんだ。マスター、本気でトップギルド目指しているからなぁ」


「ああ、なるほど」


 事情は大概理解したが、一つ気になる点があった。ところでと続ける。


「一人はミシェル様に最善まで連れて行かれたレツくんだと思うけど、もう一人は?」


 今年の新人は全員優秀だからこそ皆目見当がつかない。そんな彼に詳しい事情と共に説明していく。


「クウちゃんだよ。街の防衛にあたっていたんだけど、それなりに強いのも街にやってきたわけさ。ある程度のランクの冒険者ももちろんいるけどそれでも討ち漏らしたのがいて、どうしようってなった時にクウちゃんが伝説上の存在とも言われる超高難易度魔法《ジ・エンド》で一撃で倒して、しかもそれが新人だったと大騒ぎ。それがミシェル様の耳にも入ったようで、ミシェル様が旅についてくるように誘ったという訳さ」


 なるほどと頷くしかない。しかし意外だと彼は思う。ミシェルに目をつけられていたのはレツではなかったのだろうか? レツがミシェルに目をつけられていたのは有名な話。一言言えばそれで十分だ。それについての説明も促す。


「ところでレツくんは?」


「ああ。レツくんは探偵を名乗る女性にスカウトされて連れて行かれたぞ。探偵となりゃ間違いなく高ランク。強さを求める冒険者にとって着いて行かない理由はないな。習得技術的にミシェル様よりも相性はいいしな」


 そんなことを話していると、カマルが壊れたように笑いだしていた。


「アハ! アハハハハ!! 始めからこうすればよかったじゃん!! レツくんとクウちゃんが高ランクに教えてもらえると言うのなら、私も残りの三人を直接教え込めばいいのよ!!」


 あのギルドマスターのことだ。このままでは本当に残った新人三人を連れて修行の旅に出てしまいそうである。仕事の問題からそれはどうにかして阻止したいギルドメンバーであるが、それは無意味だった。


「うるさい! 文句あるのか!? 損失の話ならトップギルドになれば問題ない!!」


 カマルには誰も敵わない。ギルドメンバー達は新人たちの今後を祈りながら、乾いた笑いを浮かべるしかなかった。


△▲△▲△


 小型の竜が荒野を駆けていた。その背には二人の女性が跨っている。ミシェルとクウである。クウは竜を操るミシェルに恐る恐る尋ねた。


「ミシェル様、そういえばどこに向かっているのですか?」


 ミシェルは、呼び方を訂正させてから話に入って行く。


「ミシェルでいい。これから長い時間を共にするんだ。毎回堅苦しくては疲れてしまうからな。まずはそうだな……クウ、キミを誘った時に話したこと、覚えているよね?」


「はい。私の師に見つけてもらいたいんでしたよね」


「ああ、そうだ。いろいろ話を聞かせてもらったけど、キミに魔法を教えたのは間違いなくランク10の一人、【混沌】だろう。ぼくでも光と闇の属性を同時に操ろる奴なんて彼しか知らない。弟子であるキミを連れまわしていれば、その内接触してくるはずだ」


「私も驚きました。まさかランク10に教えてもらっていたなんて……、そして今度はミシェル様に教えてもらえるだなんて」


 当然ミシェルは、【混沌】探しに協力してもらうクウに対価として指導することにしていた。世界中探してもランク10複数人に指導してもらえるのはクウくらいだろう。その事実に震えそうになるが、今はそれよりも重要なことがある。

 この話が行き先と何の関係があるのだろうか? そもそもミシェルの目的は何だろうか? 思えば相手がランク10ということで、即決して着いてきてしまったため、詳しく話を聞いていない。

 悩んでいるクウに、本題に入ろうかとミシェルは切り出した。


「説明がまだだったね。この旅の目的は、ランク10を集めることなんだ。そのためにまずは【開闢】が拠点としている街、ミストラルに行こうと思っている。先日の魔族討伐の時に恥ずかしながら苦戦してしまってね。これまで干渉が無かったからと言って放置しすぎた。力を身に着け過ぎた魔族は最早ぼく一人で何とかなるものではない。ランク10を集めて、今度はこちらから攻撃するんだ」


 ミシェルの話を聞いたクウは震えながらも声を紡ぐ。それが意味することはただ一つだ。


「つまりそれって……」


「ああ、戦争だ。この前の討伐戦で人と魔族の間での均衡は崩れた。世界は大きく変わっていくだろうね」


「ええええええええ!!」


 ミシェルの言葉から予想はしていたが、改めて言われるとショックが大きい。クウは情けない声を上げてしまう。その様子を見たミシェルは思う。


(魔族との戦争と聞いただけでこれだ。魔王が誕生したなんて聞いたら世界中が大騒ぎだろうな……。さて、どうしたらいいか)


 それを考えるなら、まずは後ろの少女を落ち着かせることくらいできなくては。


「何、心配はいらない。そのためにランク10を集めるんだ!」


「……うん!」


 ミシェルの言葉で少しは落ち着いたようであった。


△▲△▲△


 また別のところでは馬車で揺られているレツと探偵の女性の姿があった。もちろんお互いに自己紹介済みだ。探偵の女性はサラという。

 サラの拠点に行くために、商人の護衛の依頼を受けて馬車に乗せてもらっていた。


「あと何日かかるんだー!!」


 その中で泣き言を言うのはレツである。かれこれ四日は馬車の上である。馬車になれないレツとしては非常に疲れる。


「言ったでしょ? とても距離遠いところだって。何度か途中の街に寄って新たに依頼を受けながらだと、あと二十六日はかかると思うわ」


 サラはレツを鍛えるために、遠くの街を選択していた。何でも冒険者の育成に特に力を入れており、鍛えるにはもってこいらしい。

 話を聞いた時にはノリノリだったレツだが、流石にここまで疲れるとは思ってもいなかった。泣き出しそうなレツにサラは言う。


「逆に聞くけど、馬車で直行しても三週間はかかる距離をずっと走り通していたかった? 確かに私たちの魔法なら馬車よりも早く辿りつけるよ? でも身体への負担を考えなさい。特にレツの魔力量ではね。馬車の方が遥かにマシよ」


「うっ……」


 それを言われては黙るしかないレツ。

 そんな時だった。商人の声がした。


「魔獣です! お願いします!」


「「はい!」」


 護衛の依頼であるため魔獣から守るのは当然である。二人はすぐに馬車から飛び降り、あっという間に大きなウサギのような魔獣を処理していく。

 サラはレツに向けて軽口を叩く余裕もあるようだった。剣を敵で切り裂きながらレツに声をかけていた。


「ちゃんと感知できた? 今回は雑魚だったから言われるまで放置していたけど、敵によってはこうはいかないからね」


「わ、分かってる! 《空弾》! 《空弾》! 《空弾》!」


 対してレツはぜぇはぁ言っていた。普通ならこれが正しいのだ。いや、むしろもっと押されていてもおかしくはない。何せ相手をしている魔獣はランク4がようやくソロで討伐するような相手であったからだ。

 ちなみに《空弾》は魔法化によって身に着けた高速で風の弾を放つレツオリジナルの技である。


 魔物の処理を終え戻ってきた二人に、商人は嬉しそうに言う。


「流石はランク9のサラさんですね。レツさんもランクの割に中々。ランク2とは思えません。良い護衛をつけられましたよ」


「いえいえ!  とんでもないです!」


「そこ、照れない! このくらいはこなせて当然にならないと! 目標はランク10でしょ?」


「……はい!」


 ランク9冒険者であるサラを師に、レツは力を身につけていく。



 【月夜の騎士】の新人五人は、それぞれの道を歩むこととなる。(約三名自分の意思ではないが)

 一章はおしまいです。全体の話の流れは決めていたのですが、今思うと直したところがたくさんあります。いつか改稿したものを投稿したいと思っていたりします。

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