死人の嘆き
緑に囲まれた小高い丘の上に
湖も見渡せる墓地がある
彼は若くして亡くなって早20年が過ぎていた
退屈で酷く寂しく人恋しさが増していた
日中は墓参に来た人の声に少しは紛れもしたけれど
何よりも自分の死を受け入れられずに
魂はまだ人間界をさ迷っていた
心残りがあった
最愛の彼女の事であった
だから、毎日毎日彼女が来るのを祈りながら
子供の様に待っていた
太陽が沈むと孤独になり
死んでしまった事を呪った
もう彼女を抱く事も出来ない
話をする事も
誰も気が付かないんだ、肉体がないから
喩え彼女が訪れたとしても
僕はただ見ているしか出来ないのか…
伝えたい事が沢山あるのに情けない
毎日毎日待ち続けた
祈りが届いたのか彼女が来てくれた時は
駆け出していたよ
彼女の廻りに風を送り出迎えたんだ
暫く振りに見る彼女は年を取っていた
だけど、直ぐに分かった
彼女は花束を活けてから線香を手向け
少し寂しげな表情で手を合わせ
彼に話しかけた
「ごめんね、早く来れなくて。
やっと、来れたわ。会いたかった。
一人寂しく暮らしているわ、早く私も逝きたいわ。
待っていてね、もう少し。
あの頃よりも、愛しているわ。」
彼には聞こえた
彼女の涙も見ていた。
待っているとも!
あの世で会おう。
君は急がないで来ればいいさ。
彼はもう一度優しく風を吹かせ彼女の髪を撫でた。