表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

図書館

作者: 試作ノ山

 目の前には整列された本が広がっていた、男よりも少しだけ背の高い、木製の棚に収められていた。

 一つの棚に何十冊もの本が収められていた、それがはるか遠くまで、等しい間隔で並んでいた。

 緑色の絨毯、突き抜けた天井、広い空間と棚、図書館とも言うべき場所に男は立っていた。

 男は歩き出した、目的は無い、ただ闇雲に本の森を歩きだした。学術書、小説、洋書、和書、様々な背表紙が男の目に飛び込んでいく。

 しかし、一つだけ本が入っていない棚があった。その棚にはお菓子が入っていた。袋詰めにされ、本と同じように整列していた。

 男は両手に一つずつ、それらを手にとった。何時の間にか、目の前には受付があり、そこには黒髪の女性が立っていた。

「こちらへ」

 一言だけ告げると、その隣にある扉を開け、男をその中へ案内した。

 そこには机と椅子、何も入っていない棚があった。机の上には、紙と鉛筆が置いてある。とても狭い部屋だった。

 その時、男は不安に襲われた。どこからともなく、全身を包み込む。

 男はお菓子の袋を持ったまま部屋を飛び出し、元の棚を探した。本の森を駆け巡った。

 しかし、元の棚は見つからなかった。あの女性に聞こうと考えるも、再び受付を見つけることは出来なかった。

 仕方なく部屋に戻り、そのお菓子を口にした。甘味が口の中に広がり、襲われた不安は無くなった。

 食べ終えると、男は再び本の森へ戻った。今度はお菓子を手に入れる為に。


 何度かそれが続いた。いくつ続いたかは分からない。しかし、ある時、部屋でお菓子を口にした時、自分の変化に気がついた。お菓子を持った手は皺がより、血管が浮き出ていた。

 男は驚愕し、お菓子を床に落としてしまった。するとお菓子はあとかたも無く、消えてしまった。

 男は慌てふためき、再び本の森へ行こうと扉のノブに手をかけた。しかし、その扉は二度と開かれる事は無かった。

 狭い部屋に置かれた木製の棚には、一冊の本も無かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ