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第93回

 ぼんやりと駅の灯りが見えてきた。眠気ねむけ駅は単線で、そう乗降客が多いという駅ではない。しかも、夜の時間帯だから、ほんのまばらな客が、いるか、いないか…といった程度のわびしさだった。私と沼澤氏は構内で切符を買い、改札口へ行った。買った切符の駅員が急いで改札口へ回り、パンチばさみを手に持って立った。要は一人で、いつも見かける駅長兼駅員だった。あのう…あなた、もう定年じゃないんですか? と、思わず声をかけたくなるような老駅員だった。

「五分ばかり遅れっから、まだぁ~、十五分ほどあるだぁ~よ」

 どこの方言かは分からないが、なまりのある口調でその老駅員は話しかけてきた。

「ああ、そうですか…。いいです。いいですよねぇ~、沼澤さん」

「ええ、私はどちらでも…」

 私が切符を差し出すと、老駅員は受けとって少し老いた風情でパンチした。後ろに沼澤氏が続いた。

「だば、冷えっから、風邪っこ、ひがねえ~ようにな」

「これはまた、ご親切に…」

 誰もいないプラットホームに二人は出てたたずんだ。老駅員が云ったとおり、冷気がホームをびっしりと覆い尽くし、客も私と沼澤氏以外はいなかった。いつものことだが、陰鬱いんうつだなあ…と思えた。

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