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第79回

 生憎あいにく、会社の多忙はしばらく続き、なかなか、みかんへ顔を出す機会はなかった。正月用餅の製造が増えたことにより、原材料の米粉を主要メーカーへ卸している我が社としては、例年、見込まれる想定範囲だったから、取り分けて困るというほどでもなかった。ただ、例年と違ったのは、多毛たげ本舗の『団子っ娘』の売れ行きがどういう訳か好調で、その分の契約が増した、という概要だった。

 仕事の切りがつき、疲れ気味だったこともあり、久しぶりにみかんへ寄ってみるか…と、欠伸あくびをしながら私は思った。大玉と小玉の関連を確認しようと思っていたのは事実だが、店へ寄る機会が遠退くと意欲も半減する。警備の禿山はげやまさんとも、ここしばらく語らっていない。月日は早く巡り、もう師走が近づいていた。

 いつもの刻みで、会社が引けてから軽食をA・N・Lで済まし、私はみかんへ寄った。店のドアを開けると、ついぞ見たことがないほどの客の入りようで、店内は人いきれで、ごった返していた。早希ちゃんは蝶のように、あちらと思えばこちら、こちらと思えばそちらと客対応に天手古舞てんてこまいだった。ママもこの日ばかりは余裕が見られず、早希ちゃんの注文を受けてバタバタとオーダーをこなしていた。さすがに声をかけるのもはばかられたから、私は一人、カウンターの片隅で借りものの猫でいた。片隅で、というのは、いつもの定席も、その横も、さらにその横も、客が座っていたからだった。

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