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第7回

「それってさ、或る意味、怪談?」

 私は場の白けムードを一掃しようと明るく云った。

「いや、どうなんだか…。一度こっきりだからさあ。根も葉もない出鱈目かも知んないし…」

 早希ちゃんは努めて明るく語ろうとする。

「そうなのよねえ。あおっといてさあ、現れないとか、そんなのだったりして…」

 ママは苦笑しながら蛇口を捻った。水が勢いよくほとばしり、グラスを洗うガラス音と洗面台を叩く水音が混ざる雑音が静寂を突き破る。私はふたたび水割りをひと口飲み、ツマミの焼きスルメにマヨネーズを絡めて頬張った。

「その紳士、年格好は?」

 取り分けて訊きたくもなかったが、時研でやっていた観察帳の癖が抜け切れていないのか、知らず知らず訊ねていた。

「かなりの年配だったわよねえ、早希ちゃん」

「どうだろ…、六十半ば、いや、七十前後ですか?」

「ええ…、そのくらいだったと思う」

「そうなんだ…。で、何やってそうな人?」

「何って…それくらいの歳なんだからさあ、まあ、老後の、そんな感じ?」

 そんな感じって、どんな感じなんだ。そこが肝心で訊きたいんじゃないか…と私は云おうとしたが、ぐっと堪えて我慢した。

「小綺麗な背広、着てらしたから、定年迎えたサラリーマンってとこじゃない? よく分かんないけど…」

 ママは早希ちゃんをフォローして、話をきっちりとまとめた。

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