第51回
私には見える玉の変化がママには見えていない。これは何か私の身に変化が生じているのではないか? と、この時、初めて幸運の兆しの到来を意識した。早希ちゃんは今日も携帯を弄っている。チヤホヤとされなくても、いっこうに構わないのだが、客という私の存在がありながら何か無視されているようで、気分は必ずしもよくなかった。そんな商売っ気のからっきしない早希ちゃんにママはお冠てもなく、彼女の好きにさせている。その訳は後日、分かるのだが、の段階では彼女が必死に携帯を弄っている訳を私は分からずにいた。それは兎も角として、早希ちゃんにも私が見える玉の変化が見えるかが気になった。
「早希ちゃん、ちょっとこっちへ来なよ」
遠くのボックス席に座っている彼女に、私は声を投げかけていた。
「えっ? なに?」
彼女は携帯を見つめる目線を上げ、私を見た。そしてゆっくりと携帯を畳みながら立つと、カウンターの私の席へと近づき、隣の椅子に腰を下ろした。
「この玉以降さ、何か変わったことないか?」
私は早希ちゃんが水晶玉を見るように仕向ける云い方をした。彼女は、私の言葉に釣られるように玉を見つめた。