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第43回

ママはおかわりのグラスを私の前へ置く。いつの間にか遠くのボックスに座っていた早希ちゃんが私の右側へ移動していた。仄かな甘くかぐわしい香水パヒュームの匂いで気づいたのだ。

「では、私はこれで…」

 急に沼澤氏が席を立った。えっ、このタイミングで? と、三人の目は沼澤氏に釘づけになる。

「これで、よろしいですか? お釣りはいいので、と云いたいところなのですが、なにぶん、稼ぎが最近、少ないものでして…。そういうことで、余った分は次に回しといて下さい」

 店を退く頃合いの判断が絶妙で、私にはとても真似など出来ない…と、白旗を上げた。私の場合、ついつい長居してしまう癖があった。

 沼澤氏が万札をママに手渡して店を出た後、残された三人は、心にぽっかり穴が開いたような空虚感にさいなまれ、しばらくは無言であった。

「今度は、いつ来られるんでしょうね?」

「それが分かんないから困るのよぉ~」

 ママに訊くと、迷惑ではないものの、どうも気楽に話せず難儀している、とのことだった。私もママの気持が分からないではない。沼澤氏がいる場合だと敬語で話さねばならないし、気兼ねもするから、確かにママが愚痴るのは的を得ていた。

「私はあまり好きなお客のタイプじゃない」

 早希ちゃんの強力なカウンターが炸裂し、沼澤氏は撃沈した。恐らくは、店を出た夜道で、くしゃみをしていることだろう…と、私は笑みを浮かべた。

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