42/317
第42回
「まあ、信じるとしましょう。お告げの通りになればいいんですがねえ」
「いえ、必ず、なります。なるんです」
執拗なまでに沼澤氏は念を押す。そう云われれば私にも少しずつ、お告げのようになるかも知れん…という気持が頭を擡げてくる。
「あのう…それは、明日からでも起こるんでしょうか?」
「ああ、事象の生じるタイミングですか? それは一概に云えませんね。明日の場合もあれば、一週間後のことだってあるのです」
「たとえば、こういう場合に起こるとか、そんなのもないんでしょうね? …ないか。ちょっと、都合よ過ぎますよね?」
私は訊ねた内容を自ら全否定した。
「ええ、そういった法則性は、私の知る限り、未だ、ございません」
「過去に私のような方がおられたようなことは?」
「あなたほど強運の持ち主ではございませんが、かなり強運をお持ちのお方は確かに、いらっしゃいました」
その時、ママが私のほぼ空になったグラスを手にした。
「ダブル、もう一杯、作るわね」
「んっ? ああ、頼みます…。で、その方は今?」
私は、なおも沼澤氏に踏み込んだ質問をしていた。