第40回
「だから、ママや早希ちゃんのように、正面に立たなくてもいい訳ですね?」
「はい、そういうことです」
「座ったままで、よろしいんでしょうか?」
「ええ、そのままで結構でございます」
偉く個人差がある占いだな…と私は少し訝しく思った。沼澤氏はふたたび同じような仕草をして、両の瞼を閉じた。もちろん、長文の祝詞モドキを読んだ後である。沼澤氏が瞑想に耽る間、みかんの店内はBGMのムード音楽以外、一切の音が遮断され、妙な緊張感が覆い尽くした。
「ば、馬鹿なっ! …このような運気の持ち主を、私は今までに見たことがない。あ、あんたはすごい! い、いえ…思わず興奮してしまいました。申し訳ございません。しかし、あなたはものすごい運気をお持ちです。今後、あなたがなされることは、ことごとく成就され、その名声は救世主として世界に轟くことでしょう!」
突然、素っ頓狂な声をあげて語りだした沼澤氏だか、上手くおだてておいて、あとからゴッソリと、せしめようという魂胆か…と思え、私はニタリと笑って沼澤氏に訊ねた。
「ええっ? 本当ですかぁ?」
「はい、本当ですとも。私は今迄に偽りのお告げをしたことはございません。これは、天地神明に誓って申し上げます」
私は一瞬、テレビ中継で流れる国会の証人喚問の一コマを思い出した。