第36回
幸運が訪れる裏には、隠された何かがあるのか…と、私は少し不気味に思った。
「ママさん、棚の水晶玉をこのカウンタ-へ置いて戴けませんか?」
「えっ? だって、掃除する時も触れちゃ霊気が失せるからいけないって云ってらしたのに…」
ママは微妙に戸惑って、沼澤氏に確認した。
「いや、それは大丈夫です。私が今、念力を玉に向かって送り、その霊力を封じましたから、何の差し障りもありません。玉は今、眠っております」
「そうですか? それじゃ…」
ママは恐る恐る、酒棚に置かれた水晶玉を布切れごと持つと、カウンター上へ移動した。
「どうされるお積りです?」
「ここであなた方とこうしてお会い出来たのも何かのご縁。微力ながら、私の霊術であなた方の今後を占って差し上げましょう」
そんなことは、こちらが決めることだ…と、私はやや不快感を抱いたが、云われるまま黙っていた。
「ほんと! ワォ~」
早希ちゃんは、すごくテンションが高い。
「まず、ママさんから…。ママさん、この水晶玉の正面にお立ち下さい」
「は、はい…。こうですか?」
お水の世界ではプロのママも、沼澤氏の前ではズブの素人っぽく、どことなくぎこちない。