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第32回

いぶかしげな顔をして、早希ちゃんは不満げに水コップを準備しだした。

「マティーニでしたわね? …沼澤さんは、この近くで週二回、心霊占いの教室を開いておられるの」

 ママが早希ちゃんと私の不穏な空気を察知して、割って入った。

「えっ? ああ…そうなんですか」

 私はふたたび、隣に座った沼澤氏のことに気持が動き、水のことは忘れてしまっていた。

「心霊教室といいましても、そう大したもんじゃありませんが…」

 沼澤氏は偉く謙遜した。この人が、この店に突如として現われ、幸運がこの店に舞い込みます、などとうそぶいた人とは、私にはとても思えなかった。そうは云っても、酒棚に光り輝く水晶玉は、現実に存在しているのだった。

「あらっ、ご謙遜なされることございませんわ。この前、買った宝くじ、バッチリ当たりましたのよ。小旅行できるぐらいですけどね…」

 ママは大層、ご満悦である。

「やったじゃない、ママ。やっぱり、沼澤さんが云う通り、この玉の霊力なのよぉ~」

 水コップを私の前に置いて、早希ちゃんがやや大きめの声を出した。

「それは、あります…」

 沼澤氏は態度を豹変させ、霊術師のように厳かな声で静かに云い切った。妙な説得力がその言葉にあるのを、私は感じた。

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