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最終回

「もう一度、同じことが…」

『ええ、ここからはあなたの本来の人生です。事象は今までと同じことが起こりますが、単一の事象そのものは、あなたが流れに任せなければその都度、変化していきます。そのままの流れに任せるか、あるいは違った道に身をゆだねるか…は、あなた次第なのです』

「そのままの流れに任せれば、起こってきたような出世の道を歩むと?」

『はい、当然そうなるはずです、100%の確率で…。任せなければ、今までとは違った世界を、塩山さん、あなたは辿ることでしょう。大玉様の霊力に頼らない新たなあなたの人生を…』

「分かりました…」

 その時、ママの声がした。

「満ちゃん、何してんの? 早くこちらへ来なさいよ。水割りの氷が解けちゃうから…」

「はい! いきます…」

 私は長椅子にかけた背広の上衣を手に持ち、席を立った。

『では、この辺りで失礼をいたします。もう、お目にかかることは恐らくないと存じますが…。ははは…そうでした。初めから、お目にはかかっていないんでしたね? 声だけのお付き合いでした』

「そうでしたね…」

 私はニタリと一瞬、笑みがこぼれた。

『恐らく、沼澤さんに会われることになるとは思いますが、彼はあなたを知らないのですから、その点はよろしく』

 それでお告げは途絶えた。私はカウンター席へ何事もなかったように座った。そして、今まで過ぎ去った時間が、ふたたび繰り返しながら流れようとしていた。

                            完


   ≪あとがき≫

 この小説は飽く迄も私の夢であり、理想であり、そして期待である。期待は現実に開花しない幻花への儚い希望であるのかも知れない。現在の世界の風潮は、この小説に描いたことなどとは全く乖離した絵画をキャンバスに描こうとしている。私は描く画家の名を知らない。しかし、すべてが美辞麗句で塗り固められ、実質的には何もない、即ち形骸化してしまった空虚な事象への警鐘を、笑いの図式の中に描いたつもりである。ただ単に笑って戴けばいい。また、この中から一縷の考慮に及んで戴けたならば、幸いである。

                                水本爽涼

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