表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/317

第31回

「あらっ! 沼澤さんじゃないですか。今日も終わって来られたの?」

 振り向くと、老齢の紳士がカウンターへ、つかつかと近づいてきた。ママの言葉で、この男が自称、霊術師の沼澤氏なんだ…と、私は思った。

「はい、そうなんですが…こちらは?」

「えっ? ああ、満君。いえ、塩山さんです。お得意様」

「そうですか…。私、沼澤と申します」

 名刺を背広から出しながら、沼澤氏は椅子チェアーにも座らず挨拶をした。なんだか失礼に思えた私は、仕方なく椅子を下りて立ち、名刺を受取ると自分の名刺を渡した。

「塩山です…。ご兄弟のことは知人から伺っております」

「ああ、兄のことですか…」

 立って話をする二人を見て、ママが笑った。

「二人とも、もう…。座ったら?」

 ふと、間が抜けた自分の立ち姿に気づき、私はすぐにカウンター椅子に座り直した。沼澤氏も私に続いて、罰が悪そうに隣の席へ座った。早希ちゃんは水コップを盆に乗せて運ぶ。そういや、私が来店した時は、いつも水が出なかった。えて、水を…と、私が云わなかったのも悪いのだが、それが当然のように繰り返されてきた。沼澤氏に水コップを運ぶ早希ちゃんを見て、この時、初めてそのことに気づいたのだった。

「早希ちゃん、俺も水」

 早希ちゃんが盆からカウンターへ水コップを置いた瞬間、私はそう云っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ