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第308回

 それから十日後、煮付につけ先輩が云っていた第ニ次小菅こすが改造内閣が発足した。私はその様子をマンションの自室テレビで観ていた。呼び込みがあるとの事前情報が入った前回とは違い、この日は楚々とした気分で冷静に画面をながめられた。先輩から入閣はない旨を知らされていたからだ。そして、全閣僚の名簿が発表されたとき、私は一塊の国民へと戻っていた。なぜかむなしさとか寂しさはなかった。というのも、世界の、いや、人類のと云っていいかも知れない偉大な仕事をなし終えた…という充実感の方が数倍、まさっていたからである。閣僚名簿を読んだ先輩は、言葉どおり官房長官を留任して内閣へ残った。農水相のときも体験済みの私だったから、Uターン準備も慣れた手際で進み、その二日後、私は東京を離れた。ただ、小菅総理から官邸へ直接、呼ばれ、内閣総理大臣賞と国民栄誉賞の菊紋入り銀杯と賞状、記念品を頂戴したのが前回とは大きく違った。私は、これですべてが終わった…と思った。

 久しぶりに故郷へ戻ったが、眠気ねむけの町はちっとも変わっていなかった。ただ、私は過去の一町民ではなく、町あげての歓待を駅前で受けたのだった。少なからず照れくさい気分で、私は花束を目覚彦一めざめひこいち町長から受け取っていた。

「いやあ、ははは…ご苦労さまでございました、塩山さん。あなたを名誉町民と致しましたからな…。近く、この駅前に、あなたの銅像も立ちます」

「えっ?! はあ、どうも恐れ入ります…」

 目覚町長にうやうやしいねぎらいの言葉をかけられ、私はそう返すのが精一杯だった。どういう訳か、国連演説のときよりも私は緊張していた。

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