第3回
秋の夜は何故か物悲しく、アンニュイな気分になる。いつの間にか私はカーラジオの音楽を流していた。目と鼻の先に街のネオンが輝きだした頃、急にフロントガラスが雨滴で濡れ始めた。小一時間も前は、夕日が辺りを染めていたのだ。それが嘘のように時雨だしている。女心と秋の空か…、いや、それは男にも云えることだが…などと妙な想いを巡らせながらワイパーを回した。それも束の間、もうコイン駐車場のPという標識が見えてきた。この駐車場には何度か車を入れたことがあるから要領は知っていた。他の駐車場と異なり、どういう訳かここだけが六時間二百円という法外な格安料金だった。そんなこともあってか、いつも満車近くの混み具合で、入れられるかどうか…と冷や汗ものだったのだが、この日は幸いにも空きスペースが何ヶ所かあり、ラッキーという他はなかった。私は車を止めると、折り畳みの雨傘を取り出し街を漫ろ歩いた。こんなこともあろうかと常時、車の中には雨傘を忍ばせておいたのだが、今回は大当りの部類といえた。街には初秋の風が漂い、雨滴もそう強くはならなかったから、歩行に難儀するということは幸いなかった。