第28回
その直後、早希ちゃんが息を切らせて店のドアから飛び込んできた。
「ふぅ~。すみませぇ~ん。あっ! 満君。もう来てたんだ」
「来ていて悪かったな」
私は笑みを浮かべて拗ねてみせた。
「まあ。今日は絡むわねぇ」
「ははは…、冗談冗談」
ママは私と早希ちゃんが話している間に店の奥へ入ったが、直ぐに戻ってきた。手には何やら持っている。
「はい! これが電話で云ってたものなのよ」
ママがカウンターの上へ置いたものとは、輝くガラス玉のようなものがたくさん入った小箱だった。見ようによっては、幼い頃によく遊んだビ―玉に見えないこともない。
「いったい何なんですか? これ…」
「三日ほど前に沼澤さんがまた、いらして、置いてかれた水晶小玉」
「はあ、それで…」
私は合いの手を入れることも忘れなかった。
「来店されるお客様お一人お一人にね、一個ずつ差し上げてくれって。まあ、お守り代わりっていうか、幸福になれるっていう、なんかそうゆうの…」
ははーん、こりゃよくある霊感商法だわ…と、私は咄嗟に思った。早い話、押し売りではない思わせ売りとでも呼べそうな如何わしい商売に思えたのだ。