第265回
農水相の時とは違い、今回の文科相は、しばらく続くだろう…と私は勝手に踏んでいた。というのも、米粉プロジェクトは世界へ向けて食糧危機への対応を発信したとはいえ、米消費は地域的なもので、全世界が必要視したかは疑問だったが、今回の地球語創設の提言は全世界が必要と認めたからだった。現に私は、何度も国連へ足を運んでいた。しかし、小菅内閣が掲げた幾つかの目玉施策がスンナリ上手くいくと、俄かに国民世論は国内の財政赤字に向けられ、問題視された。むろん、日本の財政赤字が破綻するほどに膨らんだのは小菅内閣の責任ではないのだが、某国のように国家破綻の危険がその現実味を増していた。長壁財務大臣も変動固定相場制がIMFで協定された直後、急遽帰国し、この問題解決に忙殺されることを余儀なくされた。毎年、膨大化していく当初予算額は、その多くが実は累積債務の償還のための予算となっていた。
「各省の予算要求が出揃ったのですが、総額はこの額ですよ、塩山さん…。困ったものです…」
「ほう…、今年度より多いじゃないですか」
「はい…。このままだと予算のすべてを償還に向けなきゃならん日も、そう遠くないでしょう。ははは…、これはまあ、少し大袈裟ですが…」
「それは、この日本国が破綻する、ということですか?」
「ええ、そのとおりです」
長壁財相は首を傾げて頷いた。