第256回
家に帰り着くと、空腹なことに気づいた。そういや、官邸では何も出なかった、というより、そうした時間もなく語り合っていたことを思い出した。首尾よく冷蔵庫の中には、戴き物の生ハムや昨日、量多く湯がき過ぎたパスタがあったので、それらを加熱、調理し、事なきを得た。人は食べ物を蓄えておく肉体的機能がないから不便だなあ…と思いつつワインを傾けた。ようやく人心地ついた頃、先ほど終息したお告げが、また舞い降りた。
『…もう、そろそろいいでしょうか?』
「えっ? ああ、はい…」
『そういうことで、霊力を小菅さんに送ったのは大玉様みずからで、私ではありません…』
「はあ、それは分かりました。もっとお偉い上のお方が出した霊波動なんですね?」
『お偉いとか、偉くないとか、人が考えるそういう次元の発想は私達霊界には、ないのです。ただ、霊自身の出来、不出来はございますが…』
「その辺りを、もう少し訊きたいですね」
『そうですか…。要は、出来が悪い幽体、悪霊と呼ばれる霊から、霊体と呼ばれる出来のいい霊まで、さまざま、ということです』
「で、あなた方は」
『大玉様も私も、それらのすべての霊を監視している、と人間的に云っておきましょう』
「なるほど…」
私は、そうなんだ…と、今回も全面的に信じた。