第25回
「あらっ、詳しいの?」
「いや、そんなこともないんですけどね。あるグループの知人から聞いたんですよ」
「ふ~ん、そうなの…」
ママはそれ以上は訊かず、名刺を元の棚に戻した。
「それでママ、何か幸運は起こりそうなんですか? お店に」
「あら嫌だ、まさかぁ~。ほほほ…、まだ何日も経ってやしないのにぃ~」
「そうですよねぇ~。満君はせっかちなんだからぁ」
女性二人? まあ、二人なんだろうが、その二人に冷やかされては万事休す、である。私はダブルをもう一杯、おかわりした。
それから一週間が経っていた。丁度その日は休日で、私は家でのんびりと余暇を過ごしていた。ソファーで何気なく新聞を読みながら、特製の冷えたミックスジュースを飲んでいると携帯の着信音がした。みかんのママからだった。
「はい、塩山です」
「満ちゃん? 出なきゃ、メールしようと思ってたんだけど、今日、お店に来ない? お見せしたいものがあるのよぉ~」
「えっ! 今日ですか? 何だろう、ママにそう云われちゃ、なんだか怖いなあ。まあ、時間があれば寄らせて貰います」
私は当たり障りのない返事をして電話を切った。ママが私に何を見せようというのか、この時点では全く予想だに出来なかった。