第249回
さて、専務と社長に電話をしたあと、私の気分は少し落ちついていた。こうなれば、残るのは上京のみである。そして、すべては煮付先輩の指示に従っていればよいのだ。ただ、私には自分がどこか先輩のロボットにでもなっているようで、今ひとつアグレッシブな気分にはなれなかった。それでも、この一件は何の支障もなく、順調に進んでいった。
私が上京し、久しぶりにマンションへ入ると、玄関口には様々な生活用品の小物が所狭しと置かれていた。すべては煮付先輩の心配りであった。あとから分かったことだが、品々は一度、管理人室宛に配送されたものとのことだった。こりゃ大変だわ、整理に手間どるぞ…と、腕組みして立っていると、お告げが舞い降りた。
『どうです? 今のご心境は』
「ああ、はい…。まあ、頑張るだけです」
『いろいろあるとは思いますが、めげずに乗り切って下さい』
「はい、ありがとうございます。何かあったときは、なにぶんよろしくお願いいたします」
『ええ、分かっております。霊界の決めの範囲内にて…』
そのまま玉のお告げは中断したかのように途絶えた。このときのお告げは偉く短いように思えた。私は入り口に置かれた品々を、こつこつと片づけ始めた。そして、すべてが終わったとき、外はすっかり暗くなっていた。