第230回
数日後、お告げのとおりの大異変が生じた。小菅総理を巡る政治資金の問題が発覚したのだった。マスコミ各誌やテレビ、ラジオは連日、その報道に明け暮れ、ついに小菅内閣は総辞職に追い込まれたのである。当然、内閣は瓦解し、私を含む閣僚一同は総辞職を余儀なくされた。こうして私は、やっと大臣の重責から解き放たれたのだった。こうなれば、議員でない私が永田町に踏みとどまる何の理由もなく、私は眠気へと帰省することになった。━ 大臣を、やめてしまえば、ただの人 ━とは、まさにそれで、私は頂点から真っ逆さまに転がり落ちたのである。まあ、落ちた? のかどうかまでは分からないのだが…。
「部長、お久しぶりです。お元気でしたか?」
眠気へ戻り、自分はやっぱり田舎が向いているなあ…と、しみじみ思っていた矢先、児島君の懐かしい声がした。私は思わず振り向いて家前の道を見た。以前と、ちっとも変らない児島君が暗闇を背にして笑顔で立っていた。
「なんだぁ~、児島君じゃないか、久しぶりだな。どうしたんだ、こんな所で?」
「いやあ、なにね。部長が今日、戻ってこられるって聞いたもんで、待ってたんですよ。元大臣を誰も出迎えないなんて、眠気の面汚しですからねえ~」
そう云うと、児島君は明るく笑った。