第224回
「私はいいですから、沼澤さん!」
早希ちゃんが離れたボックス席から声だけ投げてきた。一攫千金を狙う早希ちゃんは、ネットの株価情報に躍起となっていた。
「えっ? そうですか…」
沼澤氏は寂しげな表情へと戻った。いや、確かにこれは妙だ…と、私は思った。沼澤氏があの時と同じ流れで語っているように思えたのだ。もちろん、辺りを取り巻く環境と話す遣りとりの内容はあの時とは違う。しかし、沼澤氏は同じ流れで話をしているように私は感じた。これは、玉の霊力によって沼澤氏だけが時空を戻された、すなわち、過去を彷徨っていると考えるのが妥当なようだった。この考えなら辻褄が合った。「私はいいですから、沼澤さん!」
早希ちゃんが離れたボックス席から声だけ投げてきた。一攫千金を狙う早希ちゃんは、ネットの株価情報に躍起となっていた。
「えっ? そうですか…」
沼澤氏は寂しげな表情へと戻った。いや、確かにこれは妙だ…と、私は思った。沼澤氏があの時と同じ流れで語っているように思えたのだ。もちろん、辺りを取り巻く環境と話す遣りとりの内容はあの時とは違う。しかし、沼澤氏は同じ流れで話をしているように私は感じた。これは、玉の霊力によって沼澤氏だけが時空を戻された、すなわち、過去を彷徨っていると考えるのが妥当なようだった。この考えなら辻褄が合った。では、なぜそのようなことを玉がするのか? という素朴な疑問がすぐ湧いてきた。というのも、沼澤氏以外の霊能者で億万長者となって海外で優雅に暮らしている者がいることを氏から聞いていたからである。その人物はOKで、沼澤氏のようなわずかな金額を稼ごうとした者が駄目だというのは、いくらなんでも理屈が合わないと思えたのだ。しかし、その疑問は、訊ねたあとの氏の言葉で、すぐ解けた。
「ああ、それはですね、そのお方が霊能関係から身を引かれたからです。私の場合は、ご覧のように現役ですから駄目なんですよ」
「ああ…なるほどね」
芸能関係じゃなく霊能関係か…。上手いこと云われるなあ、と私は思った。