第222回
「何か、あったんですか?」
私は妙だ…と思えたので、沼澤氏に訊ねてみた。
「それなんですがね…。私、最近、辻占いをやっておるんですよ。ですから火、土曜以外の日でも眠気に来ることがあります」
「まあ! そうなんですか? 少しも知らなかったわ。教室で、ですの?」
「いえ、場所はその都度、駅前とか、会館前とかに移動して、いろいろなんですが…」
「もちろん、見料は、もらってられるんでしょ?」
ママのあと、今度は私が訊ねた。
「ええ、それは一応…。それが駄目なんでしょうかねえ?」
沼澤氏が急に心細い声で、逆に訊いてきた。
「いや、そんなことはないと思いますよ。ねえ、ママ?」
「そうですよ、沼澤さん。人間なんですから稼ぎがないと生きてけませんわよ、ホホホ…」
沼澤氏は玉のお告げがなかったことを偉く気にしているようで、辻占いと結びつけて考えているようだったが、ママが慰めて、いくらか気を取り直した。
「一度、皆さんを見てあげましょう。まず、ママさんから…。ママさん、そこの棚の水晶玉をカウンターへお願いします。そして玉の前へお立ち下さい」
ママは、棚に飾られた水晶玉を敷いた紫の布ごと移動して沼澤氏の前へ置いた。 これは…いつぞやと同じだな、と私は思った。