第22回
すると、どういう訳か、まだ酒を飲んでいないにもかかわらず、水晶玉に目線が定まらず、ふらふらと目眩がした。そんな馬鹿なことはないだろう…と自分に云い聞かせ、より一層、水晶玉を見つめ直した。だが、より目眩は募り、いよいよ目を開けているのも、ままならなくなってきた。
「どうかした? 満君!」
「満君!」
二人の声が小さくなっていく。そこで私の記憶は頓挫した。頓挫したとは、何の意味もなく気絶した自分が情けないからである。まあ、そんなことはどうでもいいが、気づけばカラオケ前の長椅子上で眠っていた。未だにこの時の原因については判明していない。両瞼をゆっくり開けると、ママと早希ちゃんが心配顔で私を見下ろしていた。
「よかった。気づいたみたい、ママ」
「大丈夫? 満君」
「えっ? あっ! どうしたんでろう、俺…」
「救急、呼ぼうって云ってたとこだったのよ」
「…どれくらい気を失ってた?」
「そう…五分弱ね」
「そんなもんか…。いやあ、参ったよ。ママが指さした酒棚の水晶玉見てたらさあ、急に…」
「どうして?」
「どうして? って、こっちが訊きたいよ」
私は少しムッとして返していた。