表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/317

第213回

 私の心配をよそに、大臣の職務は順調に推移し、かつて輩出せぬ有能大臣…と世の名声をはくした。フラッシュ・バックしたように、脳裡に浮かんだ断片的映像の数々。その中の一枚に出た国連本部で、現実に私は演説をぶつことになった。今まで演説の原稿など書いたこともなく、まあ、下手でも要旨だけは書いておこうか…などと困惑ぎみだった。そんなとき、事務次官の海鮮かいせん君がほぼ出来上がった原稿を持って大臣室へ現れた。

「大臣、これをお目とおし願い、お読みいただければ…」

 政界と官界では暗黙の了解や慣例が成り立っているのだろう。海鮮次官は多くを語らず大臣室をあとにした。その中の数枚を乱読すると、ほぼ云いたいことは書かれていたので、私は自分で作った原稿の要旨をそこへ書き足し、私風になんとかまとめた。ニューヨークの人となったのは、それから二日後だったろうか。案ずるほどのこともなく、なんなく演説を終えた私はテンションを高めて有頂天になっていた。私が国連本部で演説したニュースは国民の目や耳にどのように映ったのだろうか…と思えた。世界の新聞、テレビ報道が私の演説を斬新ざんしんで人類の食糧危機を未然に防ぐ快挙だ、と大絶賛した。私はこの段階で、世界で脚光を浴びる人々の仲間入りを果たしたのである。私が外出するたびに、どこからともなくフラッシュが光るようになったのは、この頃からだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ