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第200回

 しばらくして奥からママが現れた。手にはツマミの小皿を持っている。

「今日はアスパラガスをベーコンで巻いてみたわ」

「そりゃ美味そうだ…。ママは料理が得手ですね。いつもツマミが楽しみなんですよ」

 ほんの一瞬だが、私は消えた十日間のことを忘れることが出来た。ママは小皿を私の前へ置き、いつものダブルを作り始めた。最近は慣れで、「いつものね?」という常套じょうとう句も省略されるようになっていた。私が他のオーダーをしなかったこともある。なんか常連っぽく、私はこの雰囲気が気に入っていた。そうこうしていると、沼澤氏がおもむろにドアを開けて入ってきた。そして、空いた私の左隣の席へ座った。その座り方は音もなく、楚々とした座りようだった。姿が見えなければ幽霊か物のと同じで、恐らく気配すら感じなかったであろう。互いに軽い会釈だけを座ったままし、会話での挨拶は省略された。これも、いつからか慣れで、そうなっていた。

「どうです? なにか起こったはずですが…」

「えっ? よく、ご存知ですね? …今日は、それを訊ねたいと思っていたところです」

「塩山さん…あなた、時空を越えられましたね? っていうか、他の人々の時空が進んだのですが…」

「はい、十日ほど取り残されました。取り残された、というのも、なんか妙な云い方ですが、ははは…」

 私は自分の言葉で笑った。

「変な二人…。またおかしな話が始まったわ、ママ」

 早希ちゃんはそう云うと、ボックス席へ早々に撤収した。ママは軽く笑って受け流し、そのまま立っていた。

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