第197回
お告げは最後に笑い声とともに、「では…」とポツリと流れ、消え去った。諄いように云うが、この声は私以外の者には聞こえない。お告げのお蔭で、ひとまず、十日間が消えた状況は把握できたが、なんか自分だけが一人、置いていかれたような、実に寂しい気分に沈んでいた。その時、私の気持ちを察するかのように、みかんのママからメールが入った。いつもなら、早希ちゃんは別として、みかんとは電話で連絡していたのだが、その日のママはなぜかメールを送って寄こした。メールには今日、沼澤さんが寄られるから来ない? と、あった。私は返信メールを「行きます」と、はっきり打った。十日間が消えた私は、みかんへ行って確かめたくなったのだ。ひょっとすると、みかんは私と同じ時空なんじゃ…と、お告げを疑ってまで、微かな望みに懸けていたのである。
その夕方、A・N・Lへ寄り、適当に時間を潰すと、車をみかんへ走らせた。いつものワンパターンである。
みかんは珍しく、ママも早希ちゃんもまだ来ていないらしく、店は閉まっていて準備中の看板も掛かっていなかった。こんなことは初めての経験だった。私は、訳を聞くまでは帰れない気分となり、店ドア前のフロアへハンカチを敷いて座り込んだ。メールまで送ってきた当の本人が来店していないのは具合が悪いのでは…と云いたい心境だった。