第191回
「そう驚かないでくださいよ。まだ決まった話じゃないんで…」
「そりゃそうでしょうな。そんな話なら、テレビに流れとります」
「ええ…。まだ先の話なんですよ。今回はちょっと信じてもらえないでしょうね…」
「はい。どう云えばよろしいかなあ…。残念ながら、話が少し大き過ぎますから俄か、には…」
「実は、学生当時の先輩が国会議員をやってましてね。煮付と云うんですが…」
「煮付? 煮付と云われますと、小菅内閣の煮付大臣で?」
「ええ、その煮付です。先輩が実は昨日、眠気に来たのですが、その折り、大臣の話を…」
「心づもりを…ということですな? そう云ってもらいますと、少し分かったような…」
「そうですか。やっと信じて戴けそうですね」
「はい、それはまあ…。しかしそれにしても、大きな話ですな。会社はいかがされるおつもりで?」
「それなんですが、どうも兼業は出来ないらしいので一端、無報酬の顧問を会社にお頼みしようかと…」
「なるほど…。で、塩山大臣ですか、ははは…。いや、失礼」
こりゃいい、とばかりに、禿山さんは手の平で禿げ頭をピシャリ! と叩いて笑い、そのあとすぐ謝った。
「いやあ…飽くまでも、そうなれば、の話です」
「れば、ですか。レバ、ニラレバ炒めですな?」
「上手いこと云いますねえ。そのニラレバですよ、今のところこの話は」
禿山さんが笑い、私も笑った。ようやく氷が解けたように動き出した禿山さんは、急須にポットの湯を注ぎ入れた。