第182回
よくよく落ちついて考えれば、米粉の卸会社の中にいて営業部長という管理職を務める現実とフラッシュ映像では、明らかに違うギャップがあった。なぜ地球人類の未来を動かしかねない国連総会で私が演説をするのか? と不思議に思えたが、それでもそんな大舞台に登れる魅力は多少あった。たぶんそれが原動力となったのだろう。だが、フラッシュ映像はその一枚だけではなかった。その一枚一枚が大舞台で、まったく関連していないという奇妙さはあった。
「児島君、その後のプロジェクトの推移はどうなってる? 順調に運んでいるかな?」
部長室に児島君を呼んで、私は現状報告を受けていた。
「はい! 以前の多毛本舗のときとは販売網のスケールが違いますからねえ。営業実績だけじゃなく、まさに名実とも日本の一流企業ですよ」
「ああ…、それはまあそうだな。二部で低迷していた米翔だが、今や一部上場だからなあ…」
「仰せのとおりです。当期純利益ひとつ見ても、恐ろしい額に跳ね上がってますから…。まったく過去では想像もできませんよ」
児島君は興奮ぎみに捲し立てた。
「しかし、手放しで喜んでばかりもおれんぞ」
「はい、それは分かっています」
児島君の顔に新たな精気が漲り、紅潮した。