第181回
みかんの酒棚に置かれた玉から発せられていることは分かるが、ただその得体の知れない霊力によって私は動かされている…と考えるのは、やはり怖かった。だが私としては、この現実を直に受けるしかない…と諦めにも似た気持だった。三時半過ぎをベッドの時計は指していたが、どういう訳か余り腹は空いていなかった。私は一応、会社へ連絡しておくか…と思った。
「おお、児島君か。私だ…。別に変ったことはなかったか」
「はい、これといって…」
「そうか…。なら、いいんだ。ご苦労さん」
トイレへ行ったついでに玄関近くの電話を握った。そして、苦労性が会社へダイヤルさせていた。変わったことは恐らくないだろう…とは分かっていた。異変があれば、なんらかのお告げを玉が霊力で送ってくるはずだからだ。そうとは分かっていたが電話する自分がいた。私自身が、まだまだ小心者に思え、妙な嫌悪感が残った。
次の日からまた慌しい日々が始まった。だが、すでに私は玉からフラッシュ映像を見せられているから、その場面へ向けて今の自分がどのように流れようとしているのか、が神秘的で興味深く、疲れなどは一切、感じなかった。その原動力となったフラッシュ映像の一枚は、私が世界の食糧事情を解決する一助をしたような映像だった。